日本森林学会誌
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論文
複数試験地データからみたコンテナ苗の植栽後の活着および成長特性
壁谷 大介宇都木 玄来田 和人小倉 晃渡辺 直史藤本 浩平山崎 真屋代 忠幸梶本 卓也田中 浩
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2016 年 98 巻 5 号 p. 214-222

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抄録

コンテナ苗は植栽後の活着・成長が良いことが期待されている。しかし国内においては, コンテナ苗の成長・活着能力について統一的な見解が未だ得られていない。そこで本研究では, コンテナ苗の成長・活着能力の普遍的な傾向を把握することを目的として, 1道7県・5樹種からなる39カ所の植栽試験の情報に基づき, コンテナ苗と裸苗の植栽後の生存率および樹高・直径成長速度を推定し両者の間で比較した。階層ベイズ法を用いたパラメータ推定の結果, 全種を通してのコンテナ苗の生存率の中央値は0.96であり, 裸苗の生存率 (中央値0.97) とほぼ同じであった。また樹高成長速度および直径成長速度も, 全体推定値・樹種別推定値ともコンテナ苗と裸苗との間で分布範囲に大きな違いはみられなかった。形状比 (樹高/基部直径) は, いずれの種でも植栽直後にはコンテナ苗の方が高いものの, 植栽1年以降には, 全ての種においてコンテナ苗と裸苗との間の差はみられなくなった。以上の結果から, 一般的な傾向としてコンテナ苗の植栽後の活着・成長は裸苗と同程度であり, 育苗の利便性や植栽の効率性がコンテナ苗の優位性を示すのに有効な特徴となることが示唆された。

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© 2016 一般社団法人 日本森林学会
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