抄録
症例は69歳の男性で,胸部中下部食道癌cT3N2M0 cStage IIIに対し,根治的化学放射線療法を施行した.7か月後局所再発を来しサルベージ手術を施行した.術後4時間から経腸栄養を開始したところドレーン排液が白濁し,乳糜胸と診断した.経腸栄養を中止,TPNを開始し,リピオドールリンパ管造影で右上縦隔に2か所の漏出部位を特定した.オクトレオチド投与と胸膜癒着では排液の減少は得られなかった.術後17日目に右上縦隔の漏出部位へカテーテルを誘導し,選択的に胸膜癒着を行ったところ排液が減少し,術後23日目に胸腔ドレーンを抜去した.今回,我々はリンパ管造影で漏出部位を特定し,選択的胸膜癒着で治癒した症例を経験した.乳糜胸の選択的胸膜癒着は,効果的な治療法と考えられた.