日本消化器外科学会雑誌
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肝移植16年経過後の大腸癌の1例
鹿野 敏雄打田 和治冨永 芳博片山 昭男松岡 慎杉本 博行金住 直人野本 周嗣竹田 伸中尾 昭公
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2008 年 41 巻 2 号 p. 258-263

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抄録
脳死肝移植後に発症した横行結腸癌の1例を報告する. 症例は58歳の女性で, 1989年原発性胆汁性肝硬変による肝不全のためアメリカで脳死肝移植を施行, その後本邦で副腎皮質ホルモンおよび免疫抑制剤を投与されていた. 2005年, 定期フォローアップのCTで横行結腸肝彎曲近傍に腫瘍を指摘され, 注腸造影X線検査, 大腸内視鏡検査により1型大腸癌と診断された. 腫瘍は移植肝に強固に癒着, 肝浸潤が疑われたため, 肝部分切除合併結腸右半切除術を施行した. 病理組織学的診断はwell differentiated adenocarcinoma, ss, n0, stage IIであった. 術後経過は良好で術後第12病日に退院となった. 腎移植後および肝移植後に免疫抑制剤が使用された場合, 悪性腫瘍発生頻度が高くなると言われており, 今後臓器移植の成績が改善するにつれ, 移植後患者の悪性腫瘍症例は増加していくと考えられる. 我々が検索しえた範囲では, 肝移植後の大腸癌手術症例は本症例が本邦初の報告である.
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