本稿では医師の薬剤処方行動に関して独自に行ったアンケート調査の結果から、医師が薬剤処方の際にどのような因子を考慮にいれるか、経済的なインセンティブの違いが処方行動の違いとなって現れるかどうかについての分析を行った。結果は次の通りである。第一に意識調査の結果では、処方の際に「患者の費用負担」を他の医学的な要因と同程度に重視している。また、コスト意識をもって薬剤処方を行うことは広く医師の間で受け入れられている。第二に薬剤価格に関する知識について、医師は必ずしも正確な知識を持っておらず、その傾向は自ら薬剤の仕入れを行わない医師に強い。第三に開業医や開業医で院内処方を行っている医師がより、高薬価の薬剤を処方する確率が高いという結果は患者要素をコントロールしても見られなかった。第四に意識調査の結果では費用を考慮に入れると答えているものの、医師の考えている薬価の違いによって処方行動の違いを説明することはできなかった。