わが国の健康保険組合の財政状況は老人医療費の高騰と不況によって悪化している。この研究は健康保検組合の老人医療費の負担指標に影響を与える組合特性を明らかにすることを目的とする。対象は1996年に健康保険組合連合会に加盟している1,816組合とした。老人医療費の負担指標としては、老人1人当り入院医療費、外来医療費、医療費および被保険者1人当り老人保健拠出金とした。
老人医療費の負担指標によって関連する組合特性および関連の大きさは異なっていた。扶養率と被保険者1人当り老人保健拠出金との関連は強く、重回帰分析における標準化偏回帰係数は0.598であった。被保険者1人当り老人保健拠出金は、保険者の老人1人当り医療費と扶養率に比例する。保険者が病弱で高齢の老人や被扶養者を抱えれば、被保険者1人当り老人保健拠出金を削減することは困難である。現在の老人保健拠出金制度によって不公正な再分配が起こっている。