超音波医学
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総説
高齢者の心不全診断:心エコー図検査診断システムの現状と将来の展望
瀬尾 由広
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2024 年 51 巻 1 号 p. 29-36

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抄録

日本は超高齢社会を迎え,心不全(heart failure: HF)患者数は大幅に増加している.特に,高齢者に広く見られる駆出率が保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)の増加は,過去10年に顕著なものとなっている.従来HFpEFは拡張不全心とも呼ばれていたように,心エコー図検査による左室拡張機能の評価が重要視されてきた.このため米国心エコー図学会(American Society of Echocardiography: ASE)および欧州心血管画像学会(European Association of Cardiovascular Imaging: EACVI)の左室拡張機能を評価するためのドプラ心エコー図検査アルゴリズムが,HFpEF診断に広く使用されている.一方,本総説は欧州心不全学会が2018年に提案したHFpEF診断アルゴリズム(HFA-PEFFスコア)に焦点を当てる.我々の行なった研究結果から,HFpEF患者,健常高齢者およびHF歴のない高血圧患者とを比較することでHFA-PEFFスコアの有用性と課題について解説する.また,HFA-PEFFスコアとASE/EACVIアルゴリズムとの差異についても言及する.最後に高齢者における心不全の発症と心不全の進行防止に対する心エコー診断システムの将来展望について述べ,「早期HFpEF」という概念を提案したい.

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