2023 年 72 巻 1 号 p. 85-93
非侵襲的な試料として排泄糞を用いたニホンライチョウLagopus muta japonicaのDNA性判別法の確立を試みた.まず,性別既知のスバールバルライチョウL. m. hyperboreusの血液由来DNAを用いて,他のライチョウ類での性判別報告があるプライマー2550F/2718RとP2/P8が利用可能かを検討した.PCR後の電気泳動にて増幅断片長の差が明瞭であった2550F/2718Rが本種の性判別により適していた.次に,2550F/2718Rからの増幅産物のシーケンスデータをもとに,標的領域を短くしたプライマーLm-F/Lm-Rを設計し,2550F/2718RとLm-F/Lm-Rも用いて,生息地で採取したニホンライチョウ糞132検体で性判別を行った.増幅断片から性判別ができた検体は2550F/2718Rで68検体,Lm-F/Lm-Rで89検体であった.性判別ができた検体での採取時の外観情報との一致率は,2550F/2718Rで88.2%,Lm-F/Lm-Rで85.4%であった.Z染色体由来バンドの出現率は,2550F/2718Rで43.6%であったのに対し,Lm-F/Lm-Rでは64.4%となり,PCRの増幅成功率の向上が認められた.増幅の標的領域を短くすることで,性判別効率を向上させることができた.