2024 年 32 巻 3 号 p. 266-270
職場のパワーハラスメント(パワハラ)については,2019年の法改正によって,法律上の定義が定められるとともに,企業等の事業主に防止措置が義務付けられた.企業は法律上の定義をベースに社内規程等でパワハラを定義し,防止に取り組んでいるが,定義に当てはまらない言動については,パワハラではないことを理由に何も対応を取らないといった例も見られる.しかし,パワハラの定義に合致しないグレーゾーンの言動であっても,放置すれば企業に安全配慮義務違反等の責任が生じることがある点に注意が必要である.本稿では,パワハラの定義(いわゆるパワハラ3要素)の内容について整理するとともに,その定義に当たらない言動であっても対応が必要となりうる点について,関連判例も参考に検討を加えている.より多くの企業が,パワハラへの対応にあたり,法的な視点も意識することが重要であるといえる.