日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
原著
SSRマーカーによるいもち病菌圃場分離集団の遺伝的分化の解析
善林 薫, 鬼頭 英樹, 鈴木 文彦
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 80 巻 2 号 p. 81-87

詳細
抄録
近年開発されたイネいもち病菌の12座のSSRマーカーについて,圃場分離集団に対する識別能を明らかにすることを目的とし,「あきたこまち」が栽培されている圃場YA,YAと距離1 kmの「あきたこまち」栽培圃場TA,YAと距離30 mの「ひとめぼれ」栽培圃場YHから菌の世代別に採集したいもち病菌の集団構造をSSRマーカーにより解析した.12マーカーのうち1マーカーは多型がなく,3マーカーは世代経過時に変異する可能性が示唆されたため,中程度のアリル数を示す8マーカーを集団構造解析に用いた.供試した3圃場のいもち病菌集団および世代別分集団のハプロタイプ多様度は0.535~0.904であり,「ひとめぼれ」発生初期集団を除き比較的高い値を示した.圃場別の3集団および世代別の8分集団におけるペアワイズFSTおよびRSTを算出した結果,同一圃場の分集団間では遺伝的分化は検出されなかったが,圃場別の集団はそれぞれ遺伝的に異なることが明らかとなり,8マーカーを用いることで,種子由来を異にする同一品種上や,近接する圃場の異品種上のいもち病菌集団を識別できることが明らかとなった.また,早期に発生した菌の近接圃場への移入の検出にもSSRマーカーが有効であった.さらに,同一品種間と隣接異品種間を比較した場合,SSRハプロタイプに基づき作成した系統樹から,それらの遺伝的分化の方向が異なることが明らかとなった.以上の結果から,本SSRマーカーは従来識別が困難であった同一品種間および近接圃場間のいもち病菌集団の識別に有効であるだけでなく,いもち病菌の移出入率や遺伝的浮動の大きさの推定等,進化的指標の評価にも適用できることが示された.
著者関連情報
© 2014 日本植物病理学会
次の記事
feedback
Top