日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
ジャガイモの細胞膜電位に対する切断傷害および疫病菌感染の影響
冨山 宏平岡本 尚加藤 潔
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 53 巻 3 号 p. 310-322

詳細
抄録
ジャガイモ発芽茎スライスを用い,切断傷害および疫病菌感染の細胞膜電位に対する影響を調べた。細胞膜電位(Em)は2つの成分,即ち酸素呼吸依存性膜電位成分(Ep)および拡散膜電位成分(Ed)によって構成されている。これらの成分は通常,負の値をもつが以下の記述ではEp, Edの増加とは負の値の増加(電位差の増加)を示すものとする。発芽茎組織の切断によって切断表面細胞のEmは速やかに脱分極し,直ちに回復が始まり(一過性脱分極),数時間後に一定の電位(約-120mV)に戻る。組織内部に電極を挿入して測定すると1∼1.5時間で回復する。この一過性脱分極はEpの急激な減少と,その後に起る増加によるものであり,Edはほとんど変化しない。しかし切断(スライス作製)数時間後にEdが増加し始め,増加していたEpは再び減少し,全体としてのEmは切断数時間後から多少の変動を受けながら,少なくとも一日間おおむね一定の値を保つ。非親和性レースの感染の場合には貫入とほとんど同時に感染細胞のEdの減少が始まり,その結果Emは危険領域(約-50mV前後)まで脱分極する。緩慢に脱分極する場合にはEpが始めに増加しEdの減少を補償し,その総和としてのEmの脱分極は遅れる。急激な脱分極ではEpの増加による補償は見られない。直接に非親和性レースの感染を受けた細胞とその隣接非感染組織の細胞膜電位の変化の比較から,これらの細胞の間の電気的連絡(プラズモデスマータによると考えられる)は感染の比較的早い時期に遮断されると推定した。
著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top