慢性腎臓病 (CKD) は2002年に提唱された疾病概念であり, 近年, 脳卒中発症の危険因子の1つであると報告されている。しかし, 脳卒中病型別にその特徴を解析した報告は現在のところ認められない。 本研究は, 特定健康診査の受診者を受診後3年以内の脳卒中罹患群と非罹患群に分け, 性, 年齢, 血圧, 肥満度 (BMI), コレステロール (HDL・LDL), 糖尿病, 心房細動, 慢性腎臓病 (CKD), 飲酒および喫煙を独立変数とした多変量Logistic解析で脳卒中病型別に発症危険因子の評価を行なったものである。健診データでの蛋白尿と糸球体濾過率 (eGFR) の結果から, CKDの定義に準じて腎臓病の有無を判定して, これをCKDとして取り扱った。 脳梗塞では, 男性, 年齢, 血圧, 糖尿病, 心房細動, CKD, 喫煙が危険因子であり, 脳出血では年齢, 血圧, CKD, くも膜下出血では女性, 年齢, 血圧, 低HDL血症, CKDが危険因子として検出された。これらの結果からCKDは高血圧と同様に脳卒中の全ての病型で独立した発症危険因子であること, とりわけ脳出血との関連が大であることを本邦で初めて明らかにした。 血圧とCKDの交互作用の解析によって, これら2つのリスクが重複すると脳卒中相対危険度が2倍から4倍に上昇することが判明したことから, 脳卒中発症予防の観点からCKDを伴う高血圧の治療においては最大血圧を120mmHg台以下に降圧することが望ましいと考えられた。