日本放射線技術学会雑誌
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臨床技術
股関節観血的整復固定術における放射線業務従事者の水晶体放射線防護の必要性
松本 博樹 德重 祥也竹井 泰孝宇山 友二村 正勝人見 剛
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2024 年 80 巻 3 号 p. 287-295

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抄録

股関節の観血的整復固定術(open reduction and internal fixation: ORIF)では,術者の眼の水晶体が患者またはX線管に近くなるため,放射線業務従事者の職業被ばくが増えることは大きな問題となっている.本論文では股関節のORIFにおける放射線業務従事者の職業被ばくを明らかにし放射線防護策の必要性を検討した.ファントム実験により空中線量分布図を作成し放射線業務従事者の職業被ばくを評価した.また臨床にて小型光刺激ルミネセンス線量計を貼付した放射線防護ゴーグルを用い,術者が受ける水晶体線量の測定を行い,放射線防護ゴーグルの必要性を検討した.股関節のORIFにおける空中線量分布は後–前方向透視と比較して大腿骨頸部軸位方向透視時に高線量率領域が広範囲に広がった.大腿骨頸部軸位方向透視では術者は10 µGy/min以上の高線量率域に常に位置し,看護師は4–10 µGy/minの線量率域に位置した.診療放射線技師は0.5 µGy/min以下の線量率域に位置していた.術者の1症例あたりの3 mm線量当量は,最大0.38 mSvであった.一方,放射線防護ゴーグルは約60%の遮蔽効果が得られたことから股関節のORIFでは有用であった.白内障を発生させないためにも放射線防護ゴーグルを着用して業務に従事することが望まれる.

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