日本放射線技術学会雑誌
Online ISSN : 1881-4883
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80 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
巻頭言
臨床技術
  • 古川 未来, 礒部 理央, 大野 紗耶, 郷内 優作, 進藤 僚太, 山本 啓介, 稲葉 洋平, 千田 浩一
    2024 年 80 巻 3 号 p. 279-286
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    [早期公開] 公開日: 2024/02/05
    ジャーナル フリー

    【目的】放射線測定器には温度に依存して測定値が変化するものがある.特に屋外で使用されることも多いサーベイメータは,異なる温度環境下で測定が実施されることもあり,測定器の温度依存性を調べることが重要である.本研究では,温度補償機能のあるシンチレーションサーベイメータとないものを比較し,温度依存性について検討した.【方法】温度補償機能のあるNaI(Tl)シンチレーションサーベイメータ(TCS-1172)と温度補償機能のないNaI(Tl)およびCsI(Tl)シンチレーションサーベイメータ(TCS-171,PDR-111)を用い,室温を10~40°Cに変化させて1 cm線量当量率(µSv/h)を測定した.【結果】温度補償のある測定器は室温変化に伴う測定値の変化はほとんどなかったが,温度補償機能のないものは温度上昇に伴い最大−7.2(%/10°C)1 cm線量当量率が変化した.【結語】温度補償機能のあるシンチレーションサーベイメータは温度依存性が少なく,安定した測定が可能であった一方,温度補償機能のないシンチレーションサーベイメータは温度上昇によって測定値の低下が生じる可能性があることがわかった.

  • 松本 博樹, 德重 祥也, 竹井 泰孝, 宇山 友二, 村 正勝, 人見 剛
    2024 年 80 巻 3 号 p. 287-295
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    [早期公開] 公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー

    股関節の観血的整復固定術(open reduction and internal fixation: ORIF)では,術者の眼の水晶体が患者またはX線管に近くなるため,放射線業務従事者の職業被ばくが増えることは大きな問題となっている.本論文では股関節のORIFにおける放射線業務従事者の職業被ばくを明らかにし放射線防護策の必要性を検討した.ファントム実験により空中線量分布図を作成し放射線業務従事者の職業被ばくを評価した.また臨床にて小型光刺激ルミネセンス線量計を貼付した放射線防護ゴーグルを用い,術者が受ける水晶体線量の測定を行い,放射線防護ゴーグルの必要性を検討した.股関節のORIFにおける空中線量分布は後–前方向透視と比較して大腿骨頸部軸位方向透視時に高線量率領域が広範囲に広がった.大腿骨頸部軸位方向透視では術者は10 µGy/min以上の高線量率域に常に位置し,看護師は4–10 µGy/minの線量率域に位置した.診療放射線技師は0.5 µGy/min以下の線量率域に位置していた.術者の1症例あたりの3 mm線量当量は,最大0.38 mSvであった.一方,放射線防護ゴーグルは約60%の遮蔽効果が得られたことから股関節のORIFでは有用であった.白内障を発生させないためにも放射線防護ゴーグルを着用して業務に従事することが望まれる.

  • 伊藤 樹, 川畑 朋桂, 小野寺 崇
    2024 年 80 巻 3 号 p. 296-303
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    [早期公開] 公開日: 2024/02/05
    ジャーナル フリー

    【目的】近年,欧米諸国ではX線撮影時における生殖腺防護シールド廃止に向けた動きが高まっている.生殖腺防護シールド廃止を推奨する背景として,遺伝的影響のリスク上昇に関する報告が少ないこと,卵巣に到達する線量は直接X線ではなく遮蔽できない内部散乱X線に起因すること,加えて生殖腺防護シールドがあることで自動露出機構に悪影響を及ぼす可能性や,重要な所見を覆い隠す可能性があることが挙げられる.また,生殖腺防護シールドは大きなX線高吸収体であり,照射野内にあることで画質に対して何らかの影響を与える可能性が考えられるが,生殖腺防護シールドが画質に及ぼす影響は明らかにされていない.また,防護廃止後は不要な被ばくを避けるためにも最適な照射野の設定がより一層重要になると考えられる.そこで,本研究では,異なる線質における成人股関節正面X線撮影において生殖腺防護シールドが画質に与える影響について調査し,加えて照射野を適正に絞った条件下における画質について明らかにした.【方法】被写体を人体ファントムとして股関節正面X線撮影を行い,大腿骨頭部における画質評価を行った.照射野はa)14×17 inchとb)股関節画像の読影に必要な基準線・画像情報を損なわない照射野(適正照射野:11.6×15 inch)の2種とした.撮影管電圧は70 kVとし銅フィルタ付加の条件も検討した.入射表面空気カーマは1.25 mGyとした.このときの入射表面線量は日本における診断参考レベル(2.5 mGy)より十分に小さく,間接変換方式フラットパネルディテクタを用いた撮影においては妥当だと判断した.画質評価項目は,散乱体を含んだ信号差対雑音比(signal difference to noise ratio: SdNR)を用いた.【結果】生殖腺防護シールドを配置するとSdNRは4.6%低下し,生殖腺防護シールドが画質を低下させる結果となった.また,照射野サイズを適正に絞ると,撮影線質によってSdNRは微増減したが,生殖腺防護シールドの有無におけるSdNRの変化量にくらべ,わずかであった.【結語】本研究の結果から,股関節X線撮影時において生殖腺防護シールドを廃止する場合,照射野を適正に設定することで画質を担保したまま,不要な被ばくを減らすことができることを確認した.

  • 吉田 達也, 早川 倫生, 川代 稔之, 柴﨑 貴加子
    2024 年 80 巻 3 号 p. 304-310
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    [早期公開] 公開日: 2024/02/01
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    【目的】インシデントは,根本原因分析(RCA)によって分析することが推奨されている.われわれの施設においてもインシデントに対してRCAを実施し,再発防止策を立案し講じている.本研究の目的は,インシデントの再発防止のために,RCAによって分析された根本原因に対する再発防止策を講じ,その有効性を評価することである.【方法】治療計画用CT装置の更新後,寝台位置座標のゼロ調整を失念するインシデントが3カ月間に4回発生した.このインシデントに対して,RCAで根本原因を究明し,再発防止策を立案した.再発防止策の有効性を評価するために,再発防止効果を講じてからの1年間におけるインシデントの再発回数を収集し,χ2検定を用いてインシデントの発生確率について有意水準5%以下を有意としたときの有意差を求めた.【結果】インシデントの再発防止策は,寝台位置座標をゼロ調整したことのダブルチェックと,このダブルチェックを組み込んだ業務フロー図に沿った業務シミュレーションを行うことであった.これらの再発防止策を講じてからの1年間において,インシデントの再発回数は0回であり,その発生確率は統計学的に有意に減少した(p<0.05).【結語】インシデントの再発防止のために,ダブルチェックを周知し,業務フローに沿った業務シミュレーションを行うことは有効性の高い手法であることが示唆された.

2023年度 瀬木賞
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