抄録
腹膜由来の腫瘍性・嚢胞性疾患は稀であり,その診断基準などについてはいまだに不確定な部分も多い.今回われわれは,鼠径ヘルニアの手術中に発見されたmesothelial cystsの3例を経験した.症例はいずれも鼠径ヘルニア嚢内に嚢胞性病変を認め,病理組織所見も併せて2例をsimple mesothelial cysts,1例をmultilocular mesothelial cystsと診断した.過去の報告や成書も参照して本疾患の疾患概念や分類について検討したところ,同一の病態に対してmulticystic mesotheliomaとmultilocular mesothelial cystsの複数の診断名が存在し,混乱を生じていると考えられた.両者を明確に区別しうる診断基準を設けることが,本疾患の疫学や病態を明らかにする上で有用であると考えられた.また鼠径ヘルニア手術中に本疾患が見出される機会は意外に多いものと考えられ,見落とさないよう注意が必要である.