抄録
1996年から2007年までの12年間に当科で経験した痔瘻癌6例の臨床病理学的特徴と治療成績を検討した.大腸肛門部原発悪性腫瘍症例467例中痔瘻癌は6例(1.9%)であった.平均年齢61.8歳,男性5例,女性1例,主訴は肛門部痛と粘液排出が多く,痔瘻罹患期間は平均27.2年であった.術前確定診断は粘液細胞診断3例,組織生検2例,切除標本1例得られた.組織型は粘液癌が5例で遠隔転移,リンパ節転移はなかったが壁外性進展を特徴とし,局所が高度に進行し切除断端の確保が困難で局所再発も多かった.進行は緩徐で長期生存例も認められたが,放射線や化学療法が著効し完全奏効した症例はなく,局所の遺残・再発をきたすと根治は困難で局所での腫瘍の進展が予後因子となった.難治性痔瘻症例は臨床経過に着目し,早期診断を行い,手術に際しては的確な病巣の広がり診断を行い,十分な切除断端の確保することが肝要である.