抄録
症例は59歳,男性.便秘,腹満,腹痛を主訴に受診した.腹膜刺激症状を認めず.血液検査では軽度炎症反応を認めたが,血液ガス分析上アシドーシスの所見を認めなかった.腹部CTでは肝の辺縁まで及ぶ樹枝状の門脈ガス像と回腸を主体とした小胞状壁内ガス像を認めたが,free airは認めなかった.造影CTでは均一な腸管造影所見を呈し,腸間膜動脈の閉塞所見を認めなかった.腸管壊死や穿孔による腹膜炎を疑う所見に乏しいことより,便秘に伴う腸管内圧の上昇により腸管気腫をきたし門脈ガス血症に至ったと判断し,高気圧酸素療法を主体とした保存的治療を開始した.翌日には門脈ガスは消失し保存的に治癒した.腸管壊死や穿孔・梗塞が生じた重症例は緊急手術が必要であるが,軽症例は厳重な観察のもと保存的治療により改善する可能性がある.血液検査所見や画像的検査所見のみならず,理学所見をも含めた全身状態の的確な把握が肝要と考えられた.