2010 年 71 巻 3 号 p. 761-765
直腸穿通が原因と考えられる良性直腸狭窄症例を経験した.症例は84歳の男性で,便秘,下腹部膨満感で受診,亜イレウス症状を認めたが,排ガス・軟便はみられた.身体所見や血液検査で炎症所見はなかった.直腸診で腫瘤を触知,腹部CT検査では直腸腫瘍性病変が,また注腸造影X線検査では直腸完全閉塞所見がみられた.大腸内視鏡検査では直腸狭窄と粘膜下腫瘍所見を認めたが,粘膜面に腫瘍はなく,狭窄部をどうにか通過できた.手術時狭窄部に腫瘍はなく,直腸Ra部腸間膜内を中心に炎症性硬化所見が見られた.切除直腸病理組織学的検査所見では悪性所見はなく,粘膜面から固有筋層,漿膜面へと貫く炎症性細胞浸潤と一部粘膜欠損がみられた.直腸穿通の原因として憩室炎が疑われた.