2020 年 81 巻 1 号 p. 65-71
症例は67歳の男性で,S7領域の2個の肝細胞癌に対して腹腔鏡下肝拡大後区域切除術を施行した.途中,右肝静脈末梢枝を損傷したが圧迫止血をしながら肝切離を続けていたところ,突然SpO2が86%まで低下するとともに収縮期血圧も80mmHg台まで低下した.EtCO2が25mmHgに低下し,PaCO2が95.4mmHgと上昇して双方に乖離を認めたことから,気腹ガスによる炭酸ガス塞栓と診断した.直ちに手術を中断し,全身状態が安定した後に完全鏡視下からhand-assisted laparoscopic surgery(HALS)に移行して手術を完遂した.腹腔鏡下肝切除中に炭酸ガス塞栓が生じた際,炭酸ガス流入部として肝静脈損傷部が明らかで効果的な用手圧迫が期待できる場合,HALS移行は有効な選択肢となり得ると考えられた.