2021 年 82 巻 1 号 p. 120-126
バリウムを用いた上部消化管造影後に生じる下部消化管穿孔は稀であるが,当院では2009年から2019年までの間に8例の症例を経験している.平均年齢は63歳,検査から発症までの平均時間は2日であった.穿孔部は6例でS状結腸に認めた.消化器疾患に関して3例で腸管憩室の既往があり,2例が慢性便秘症にて下剤常用者であった.5例で一期的腸管吻合が可能であった.在院日数の平均値は2日であり,在院死となった症例は認めなかった.医学中央雑誌で「バリウム」「下部消化管穿孔」「大腸穿孔」と検索したところ,26例の報告を認めた.自験例と合わせた34例で比較検討したが,全体の3分の1が消化器疾患を有する症例で検査から概ね4日以内に発症し,穿孔部位はS状結腸に多いとの結果であった.特に,消化器疾患を有する方がバリウムを用いた上部消化管造影検査後に強い腹痛を訴えた場合には,下部消化管穿孔の発症に留意する必要がある.