2022 年 83 巻 2 号 p. 293-300
乳頭乳輪温存乳房全切除術(nipple-sparing mastectomy:NSM)は,整容性に優れた術式として増加しつつあるが,一般的には乳房再建を前提とした術式である.われわれは,NSM後に一次再建を省略した乳癌症例を経験したので報告する.2008年8月から2010年11月までの間で,一次乳房再建をしないNSMを施行した乳癌患者は4例であった.平均年齢は52歳,いずれもマンモグラフィにて石灰化を認め,画像上広範な病巣を認めた.皮膚切開は全例,乳輪横切開を行い,3例は術中迅速にて乳頭側断端検索を行った.永久病理診断は浸潤癌2例,DCISが2例で,永久病理診断では4例中2例で乳頭側断端陽性であった.術後の乳頭乳輪壊死,感染症などの合併症は認めなかった.術後に乳房の喪失感がないことで全ての患者の満足度は高かった.10年以上の経過観察中1例の乳頭再発を認め,局所切除後の再燃は認めていない.一次再建省略のNSMは,広範なDCISなど限られた症例において治療選択肢の一つとなりうると考えられた.