抄録
COVID-19をはじめとするパンデミックへの対策では、感染症による健康被害と感染防止策がもたらす社会的被害との比較衡量が必要となる。健康被害の評価においては死亡者等の単なる数に止まらず、様々な指標を用いた多面的な検討を行うことが求められる。本研究では、既存の人命リスク評価指標のうち死亡者の質的違いが検討できる余命損失年数を用い、他の死因との比較を行うことでCOVID-19の疾病としての特徴の一側面を捉えることを試みた。その結果、1人当たりの余命損失はインフルエンザや肺炎と同程度であること、交通事故や自殺の3分の1から2分の1程度であることが分かった。また1ヶ月当たりでは、COVID-19の損失はインフルエンザの2.4倍となるが、交通事故と同程度であり、肺炎や自殺に比べるとそれぞれ10分の1、8分の1程度であった。これらを踏まえ、リスク評価多面化の意義と、リスク間のトレードオフや不確実性の性質を考慮した意思決定手続きについて総合的な研究を行い政策実践に活用する必要がある旨の考察を行った。