2026 年 87 巻 1 号 p. 51-58
動脈腸管瘻は稀な疾患で,緊急度・重症度ともに非常に高い疾患である.62歳,女性.S状結腸癌再発に対して,bevacizumab-FOLFOX療法後に根治切除術を行った.術後自宅退院していたが,多量下血による出血性ショックで救急搬送された.救命処置にもかかわらず,急速に死亡に至った.病理解剖により左総腸骨動脈腸管瘻による失血死の診断となった.潜在的に結腸吻合部の縫合不全が生じ,縫合不全に伴う感染性炎症が左総腸骨動脈の剥離面にまで及び,左総腸骨動脈腸管瘻をきたしたと示唆された.発症から死に至るまでが非常に急速であり,救命が極めて困難な病態であった.腰痛と左鼠径部痛の非典的な症状であり縫合不全の診断に至らず,一時的にはショックを離脱したことで,消化管内視鏡検査や血管造影検査などの迅速な対応へ至らなかったことが反省すべき点である.