2024 年 74 巻 3 号 p. 194-203
【緒言】鍼の電解腐食との関係について、 電気の極性に注目して文献的調査と考察を行った。 【方法】鍼通電、 直流、 電解腐食を検索用語として、 医中誌Web、 Google Scholar、 PubMed、 Elsevierにより国内外の文献を収集した。 【結果】検索の結果、 鍼灸に関係の無いもの、 内容が重複するものを除外し、 9件の邦文文献を抽出した。 その結果、 生理食塩水を用いた研究9件、 鶏や豚の肉片を用いた研究2件、 動物での研究2件、 ヒトを対象とした研究3件で、 海外の研究は6件であった。 【考察】いずれの研究においても、 自動車のバッテリーのような過大な電流を直接流さない限り、 プラス極側の鍼には電解腐食は見られなかった。 マイナス側の鍼は、 過大な電流を流しても、 表面には目立った電解腐食は認められていないことが示されていた。 外国語の文献は、 鍼の電解腐食と極性に関する基礎的研究はなく、 鍼の素材やコーティングの有無による腐食に関する研究であった。 【結語】金属が溶出するのはプラス極からである。 鍼に直流通電する場合、 プラス極側は皮膚表面電極とするべきである。 ステンレス鍼の中でもステンレス鋼線材SUS316を使用した鍼は、 他の鋼線材を使用した鍼よりも、 より通電に適していると考えられる。