1983 年 33 巻 2 号 p. 134-137
健康の概念は従来専ら身体的異常のない状態と簡単に考えられてきたが, 文明の進歩や社会の複雑化に伴い精神的不健康者が増加し, 心の健康が重要視されてきた。そこでWHOの定義を踏まえ, 健康とは人間らしい精神生活がもたれ, 溌刺とした生きがいのある良い生活が送れる状態で, 個人の心身の他に, 社会面も考慮する巾広い概念といえる。最近はこれに霊的健康を加えた全身的健康を意味する。鍼灸及び気功はこの全身的健康を支えているといえる。次に老人医療においても東洋医学の適応をもっと積極的に考慮されるべきであるし, 健康診断においても東洋医学的診断は重要である。いずれにしても健康科学と鍼灸という命題は医療の中に鍼灸を位置づけるための第一歩といえる。