日本臨床細胞学会雑誌
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症例
Peutz-Jeghers 症候群に合併し, 体腔液中に腫瘍細胞が出現した子宮頸部腺癌の 1 例
遠藤 隆藤井 丈士中西 美紗緒太田 明宏沼田 ますみ中野 嘉子望月 眞遠藤 久子
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2009 年 48 巻 4 号 p. 211-215

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抄録

背景 : Peutz-Jeghers (PJ) 症候群は皮膚粘膜色素沈着を伴う遺伝性消化管ポリポーシスで, その 3∼24%に癌化を伴い, 卵巣性索間質腫瘍, 子宮頸部高分化腺癌, 乳癌などの他臓器腫瘍合併が知られている. 今回 PJ 症候群に合併し, 胸水と腹水に腫瘍細胞が出現した子宮頸部腺癌の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 39 歳, 女性. 幼少期より PJ 症候群による腸重積を繰り返していた. 腹痛と下血, 発熱を主訴に当院消化器科を受診. 初診時に下腹部腫瘤を認め, 上下部消化管内視鏡で著明なポリポーシスを認めたが, 内視鏡的にも消化管生検でも悪性所見はみられなかった. 腹部 CT で子宮頸部肥厚と両側胸水・腹水がみられ, 胸腹水細胞診が陽性であった. 子宮頸癌疑いで婦人科に転科し, 子宮頸部細胞診と生検が施行され, 内頸部型腺癌 (臨床病期IV期) と診断した. 緩和ケアが選択され, 腫瘍進行とともに約 1 ヵ月後に死亡した.
胸水・腹水細胞所見 : 炎症性背景に中等大∼大型異型細胞が孤立性∼小集団で出現していた. 核は類円形で偏在し, 明瞭な核小体と微細なクロマチンを有し, 胞体はライト緑好性で泡沫状, 橙色に淡染する粘液空胞も認められた.
子宮頸部擦過細胞診 : 粘液豊富な高円柱状細胞が柵状配列を示す集団で出現しており, 黄色調を帯びた胞体内粘液もみられた. 核小体が明瞭で細胞異型の目立つ重積性集塊も混在してみられた.
子宮頸部組織生検 : 胞体内粘液の豊富な高円柱状細胞が柵状∼乳頭管状に配列する内頸部型腺癌であり, 充実性に増生する細胞異型の目立つ部分が混在していた. 酵素抗体法では腫瘍細胞は cytokeratin (CK) 7 (+), CK20 (−), CDX2 (−), carcinoembryonic antigen (+), estrogen receptor (−), progesterone receptor (−), MUC1 (+), MUC2 (−), MUC5AC (+), MUC6 (+), HIK1083 (−/+), cyclooxygenase-2 (+) であった.
結論 : PJ 症候群に合併する子宮頸部腫瘍は, いわゆる悪性腺腫か粘液豊富な高分化腺癌が多く報告されているが, 本症例では悪性腺腫というよりは多彩な像を呈する明らかな腺癌であった. PJ 症候群で体腔液中に粘液陽性の腺癌細胞が出現した場合, 子宮頸部腺癌も鑑別診断に考慮する必要がある.

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© 2009 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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