日本臨床細胞学会雑誌
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症例
タモキシフェン投与中に発見された卵管上皮内癌の 1 例
牛腸 理江中村 恵美子宮川 恭一金本 淳清水 敏夫川口 研二
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2009 年 48 巻 4 号 p. 216-219

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抄録

背景 : 卵管癌は婦人科悪性腫瘍の 0.3∼1.0%を占める予後不良の疾患である. 近年その発生にタモキシフェン投与や乳癌の遺伝子異常が関与する症例が報告されている.
症例 : 58 歳, 3 経妊 3 経産. 50 歳時左乳癌にて左乳房摘出. 術後タモキシフェン投与中, 1 年後の検診の子宮頸部擦過細胞診で内膜癌を疑う細胞が出現した. 子宮頸部・内膜組織検査では明らかな悪性所見は認めなかった. 臨床的に子宮・卵巣・卵管に腫瘍は確認されなかったが, 子宮内膜癌や卵巣癌を否定できず 2 ヵ月後子宮両側付属器・大網切除術を施行. 肉眼的に子宮・付属器に腫瘍性病変は認めなかった. 子宮・卵巣・卵管の全割標本から両側卵管上皮内癌が認められた. 術後 2 年で横隔膜下, 4 年後に心外膜近傍のリンパ節転移が発見され摘出. その後 3 年経過するが再発は認めず現在も存命中である.
結論 : 子宮頸部・内膜細胞診で腺癌細胞が出現しているにもかかわらず, 臨床的に腫瘍を確認できない場合には卵管癌も考慮し, 詳細な検索が必要である.

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© 2009 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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