日本臨床細胞学会雑誌
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特集 <細胞診はどこまで組織所見を捉えられるか—細胞像から組織構造を掴む—>
胆汁細胞診における良悪性の鑑別
—細胞診はどこまで組織所見を捉えられるか—
羽場 礼次串田 吉生門田 球一香月 奈穂美林 俊哲大通 清美河野 幸治
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2010 年 49 巻 4 号 p. 283-289

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抄録

目的 : 胆汁細胞診での良悪性の鑑別における細胞学的な特徴を明らかにし, 細胞像からの組織構築推定の可能性について検討した.
方法 : 1999∼2008 年の胆汁細胞診 414 例, 検査回数 1627 回中の疑陽性例 45 例において, 不規則重積, 核の配列不整, 細胞集塊の凹凸不整, 核の腫大, 核形不整, クロマチンの異常, 核の大小不同, 著明な核小体, 壊死背景, 多彩な細胞集塊の有無について検討を行った. また, 胆管癌で手術された 26 例を用いて, 組織型, 粘膜面での組織パターン (高円柱状, 融合状, 小型集塊状の 3 型), 細胞集塊の出現様式 (大型集塊, 小型集塊, 大型集塊・孤在混合, 小型集塊・孤在混合, 孤在の 5 型), 異型度 (低異型度癌と高異型度癌) について比較検討した.
成績 : 腺癌例では, 核の配列不整, 核形不整, 核の大小不同が高頻度にみられたが, 良性例では細胞集塊の凹凸不整, クロマチンの異常, 壊死背景, 多彩な細胞集塊の出現はみられなかった. 細胞診標本上, 大型集塊や小型集塊が主体であれば高円柱状, 孤在が主体であれば小型, 大型集塊・孤在混合, 小型集塊・孤在混合では高円柱状, 融合, 小型の出現様式を認めた. しかし, 低異型度癌や高異型度癌それぞれに特徴的な出現様式や細胞学的な特徴はみられなかった.
結論 : 胆汁細胞診で良悪性の鑑別を行うためには, 細胞集塊, 個々の細胞, 背景所見を総合的に評価しなければならないが, 細胞像のみから組織構築を推定することは困難であった.

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© 2010 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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