日本臨床細胞学会雑誌
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胃キサントーム (黄色腫) の塗抹細胞像
豊原 時秋大久保 俊治及川 正道大倉 一雄高橋 年美石岡 国春榛沢 清昭佐藤 明梅津 佳英武田 鉄太郎
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1982 年 21 巻 2 号 p. 190-195

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抄録

胃キサントームの細胞診に関する研究報告はきわめて少ない. 著者らは, 胃キサントームと組織診断された12例のPapanicolaou染色, Sudan III染色およびPAS染色の塗抹標本を用いて, 胃キサントーム細胞の形態学的特徴について検討した. 胃キサントーム細胞は, 細胞が大型で大小不同性は著しいが, 核は小型で大小不同性や核形の不整はなく, 核クロマチンパターンの異型性が乏しい. また, 核小体は, 樹枝状で小さい. 核・細胞面積比はきわめて小さく, 胞体は泡沫状で淡明であり, さらに, Sudan III染色で陽性, PAS染色で陰性であることが特徴的な所見であった. 一見, 印環状癌細胞と類似するが, 核が高度の偏在傾向を示さない点, 小型の楕円形~円形核で, 不整核はなく, 核クロマチンが濃染しない点, Sudan III染色で陽性, PAS染色で陰性を示す点で細胞鑑別は可能であると考えられた. 胃の細胞診では, 円柱上皮細胞, 胃腺細胞, 再生上皮細胞, 赤血球, 白血球, リンパ球, 形質細胞, 組織球, 血管内皮細胞, 繊維芽細胞, 平滑筋細胞および良悪性腫瘍細胞が出現するが, 胃キサントーム細胞の特徴ある細胞像を総合的に判定すれば, これらの細胞との鑑別診断は容易であると考えられた.

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