日本臨床細胞学会雑誌
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ヒト卵巣癌株のin vitro制癌剤感受性試験に関する研究
特に細胞形態を指標とする基礎的検討を中心に
乾 裕昭安田 允寺島 芳輝蜂屋 祥一杉下 匡天神 美夫
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1982 年 21 巻 4 号 p. 653-662

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抄録

In vitro制癌剤感受性試験で細胞形態と薬剤感受性, および制癌剤の細胞回転に与える影響を検討, 化学療法による細胞死の問題も含め, 臨床応用をはかるべく本研究を行った.
卵巣未分化胚細胞腫由来の細胞株 (JOHYL-1) をヌードマウスに移植, この皮下腫瘍より, Single cell suspensionを作製, 5-fluorouracil, Mitomycin C, Vincristine, Carbazil quinoneの4制癌剤を高濃度短時間, 低濃度長時間をそれぞれ単独接触させ検討した.
1) 位相差顕微鏡所見では, 細胞質内顆粒と細胞質ならびに核の腫大を伴った大小突起細胞の出現を認めた.
2) Pap. 染色所見では, (1) 細胞質の染色性低下ならびに腫大, 空胞出現, 細胞膜の不明瞭化, (2) 核の腫大と空胞出現, クロマチンの粗網状変化, (3) 核小体の腫大, 不明瞭化をそれぞれ認めた.
3) Tripan blueによるdye exclusion methodと, 核長径測定による核腫大を検討した結果では, 核腫大と死細胞率の増加が相関関係にあることから, 両者には密接な関連性があることが示唆された.
4) ICPによる核DNAヒストグラムの解析ではCQによる高度な核腫大化をきたした細胞が細胞回転の停止を認めた.
以上より核腫大と細胞死は密接な関連があり, 感受性試験のパラメーターとなり得ることが示唆された.

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