日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部擦過細胞のPCR法によるHPV DNAの同定とその細胞診的検討
中澤 愛子京 哲中西 一吉小川 晴幾笹川 寿之清水 廣田中 善章井上 正樹上田 外幸谷澤 修
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1991 年 30 巻 3 号 p. 467-472

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抄録

子宮頸部におけるHuman Papillomavirus 16型, 18型の感染を子宮頸部擦過細胞から得たDNAを用いてPolymerase Chain Reaction (PCR) 法により検出した.さらにHPV感染と組織診, 細胞診との関係を比較検討した.Dot blot法と比較してPCR法は検出感度に優れていた.PCR法にてHPV16型または18型を検出した症例数は, 正常69例中11例, 頸部コンジローマ3例中0例, CIN 67例中17例, 浸潤癌30例中11例であった.Koilocyte, binucleated cell, dyskeratocyteなどのHPV感染細胞所見を検討できた59例中, PCR法にてHPV 16型または18型が陽性となったのは19例, 陰性であったのは40例であった.HPV 16型または18型陽性の19例中, koilocyteは5例 (26%), binucleated cellは4例 (21%), dyskeratocyteは11例 (58%) で, HPV陰性例40例中では, それぞれ1例 (3%), 10例 (25%), 15例 (38%) に認めた.しかし, いずれの所見も特異的でなく, 細胞診のみではHPV感染を検出するのは困難であると思われた.また, 細胞診, 組織診にて正常の症例中, 約16%にHPV DNAを認め, これらの症例の今後のfollow upが重要であると思われた.

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