日本臨床細胞学会雑誌
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家族性大腸腺腫症に合併した甲状腺乳頭腺癌の細胞像
根本 哲生森山 美樹坂田 泰子山本 嘉子江石 義信菅野 純
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2000 年 39 巻 5 号 p. 343-346

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抄録

背景:家族性大腸腺腫症 (Familial adenomatous polyposis以下FAP) はAPC遺伝子のgermlinemutaionに起因する遺伝性疾患であり, 若年女性の甲状腺に乳頭腺癌をしばしぼ合併することが知られている.近年, 甲状腺乳頭癌に細胞の節状配列や充実性増殖などの組織学的特徴を有するcribriform-morular variant (CMV) が提唱され, FAPに伴う甲状腺乳頭癌は, 多くがその範疇に入るものと考えられる.今回, われわれは家族性大腸腺腫症に合併した甲状腺癌の2例を経験し, 穿刺吸引細胞像を検討した.
症例:症例はいずれも20歳女性.甲状腺腫瘤に対し穿刺吸引細胞診が行われた. 通常の乳頭癌にもみられるコロイド, 核の切れ込みなどの他に, 1) 細長い核を有する高円柱状細胞の柵状配列, 2) 多角形細胞の充実性胞巣, 3) 立方状細胞の節状配列が特徴的な細胞所見であり, 穿刺吸引細胞像からCMV甲状腺癌の推定が可能と考えられた.
結論:CMVは非FAP患者では比較的まれであることから, 甲状腺穿刺吸引細胞診でこれらの特徴的な細胞像を認めた場合には, 甲状腺腫瘤が初発症状として気付かれたFAPである可能性を考慮する必要があると考えられる.

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