日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺の筋線維芽細胞腫の1例
山崎 大吉村 英雄中村 ハルミ吉田 康之宮本 誠廣田 誠一
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2000 年 39 巻 5 号 p. 354-358

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抄録

背景:今回われわれは, 右乳房に発生した筋線維芽細胞腫と考えられるまれな1例を経験したので報告する.
症例:75歳, 女性.徐々に増大する右乳房の腫瘤を主訴に来院し, 画像検査にて葉状腫瘍が疑われた. 穿刺吸引細胞診では, 紡錘形から卵円形の腫瘍細胞が若干の腫大や核形不整を伴って認められ, 脂肪と思われる大小の空胞や膠原線維由来と思われるライトグリーン好染性の帯状の物質が認められた. 細胞診上は上皮成分が採取しえなかった葉状腫瘍の可能性を第一に考えた. 手術組織標本では, 腫瘍は好酸性の細胞質を持つ紡錘形もしくは短紡錘形の細胞より成り, 一部では7個/10HPFの核分裂像が認められたものの有意な核異型はみられなかった. また, 脂肪細胞や帯状の膠原線維束が介在していた.免疫組織化学では, 腫瘍細胞は, vimentin, α-SMAが陽性であった.MIB-1は, 多いところで腫瘍細胞100個あたり20個前後の陽性を示した.以上より, 細胞増殖能の比較的強い乳腺の筋線維芽細胞腫と診断した.
結論:臨床的に境界明瞭な腫瘍で, 細胞診上, 紡錘状腫瘍細胞に混じって脂肪細胞がみられる場合には, 筋線維芽細胞腫の可能性を考慮することが診断上重要と考えられた.

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