Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
Online ISSN : 1882-336X
Print ISSN : 1882-3351
ISSN-L : 1882-3351
原著論文
無核紀州型の無核性カンキツにみられる発育停止種子の特徴
山崎 安津北島 宣小原 敬弘田中 満稔長谷川 耕二郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2009 年 78 巻 1 号 p. 61-67

詳細
抄録
‘無核紀州’由来の無核性の発現を組織学的に明らかにした.‘無核紀州’およびその後代の無核性品種・系統では,有核品種にみられるような完全種子や不完全種子は認められず,無核であったが,いずれも有核品種ではみられない形態を示す受精種子を形成した.すなわち,不受精胚珠よりやや大きく,中央部に膨らみがあり,種皮が未発達な可食種子が特異的に観察され,これを A タイプ種子と仮称した.ほとんどの A タイプ種子は接合子や前胚で胚の発育が停止しており,胚の発育停止時期は受粉 10 週間後以降であった.これらのことから,無核紀州型無核性の発現は,接合子や前胚で発育が停止した胚を含む,種皮が未発達な A タイプ種子を形成することで特徴づけられると考えられた.しかし,胚乳は認められたことから,胚の発育停止は胚乳の退化に起因していないことが明らかとなった.無核紀州型の無核性発現は胚の遺伝子型に左右されないことから,A タイプ種子形成は胚における遺伝子の発現ではなく,種皮組織における遺伝子の発現と密接に関連している可能性が高いと考えられた.
著者関連情報
© 2009 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top