Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
完全甘ガキ選抜に有効な RFLP マーカーの PCR マーカーへの変換
神崎 真哉山田 昌彦佐藤 明彦三谷 宣仁宇都宮 直樹米森 敬三
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2009 年 78 巻 1 号 p. 68-73

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抄録
カキ(Diospyros kaki Thunb.)は果実の脱渋性の違いによって 4 つのタイプに分類されるが,そのうち完全甘ガキ(PCNAタイプ)のみが樹上で安定して脱渋する.PCNA タイプはその他のタイプ(non-PCNA タイプ)に対して遺伝的に劣性であり,また,この形質は polysomic な遺伝様式を示す一つの遺伝子(AST 遺伝子)に支配されているとされている.これまでに AST 遺伝子座に連鎖している 2 つの RFLP マーカー(A1 と A2)が単離されており,PCNA タイプのマーカー選抜に有効であることが示されている.本研究は,これらの RFLP マーカーを PCR マーカーに変換することを目的として行った.まず,2 つの RFLP マーカーに対応した領域を inverse PCR によって単離した.各領域の塩基配列に基づき 2 種類のプライマーセット(E4/E9r と E4/A2r)を設計したところ,RFLP マーカーに対応した 2 つの SCAR(sequence characterized amplified region)マーカー(PCR-A1 と PCR-A2)を検出することが可能となった.‘西村早生’由来の戻し交雑集団における 2 種類の SCAR マーカーの分離は,それぞれ対応する RFLP マーカーと完全に一致していた.また,‘会津身不知’由来の戻し交雑集団 FU-275 では PCR-A2 は検出されなかったが,供試した non-PCNA 個体の全てで PCR-A1 が検出された.したがって,これらの集団では SCAR マーカーによって PCNA タイプと non-PCNA タイプの識別が可能であることが示された.一方,‘黒熊’の後代である KU-325 において,マーカー領域と AST 遺伝子座との連鎖関係が崩れている個体が確認され,‘黒熊’由来の交雑集団では,今回開発したマーカーは有効でないことが示された.これらの SCAR マーカーを利用した遺伝解析の可能性について考察した.
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© 2009 園芸学会
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