抄録
ブドウの発根ならびに根の成長に伴う細胞構造の変化を調査した.スベリン化した休止状態の根の先端から新根が発生する時,根の先端が拡大し,それに伴ってスベリン化した根端表面が離脱した.根の発生初期では,頂端分裂組織において細胞核が観察でき,多くの細胞分裂像がみられるようになった.根の横断面における維管束の原基当たりの道管数が約 5 個に増加した段階で,内皮の放射方向の細胞壁にカスパリー線が点状として現れた.根の先端から 150 mm の部位の内皮は完全にスベリン化し,維管束の原基当たりの道管数も増加した.若い根において,外皮のカスパリー線は必ずしも確認できなかったが,外皮のスベリン化は内皮より早く観察された.根の齢が進むにつれて内皮と内鞘の間に裂け目が出現した.内皮が内鞘から離脱する前に,内鞘の細胞分裂が盛んとなり,スベリン化した内鞘の層数も増加した.