抄録
根腐病抵抗性品種ノイバラ‘松島 3 号’(Rosa multiflora ‘Matsushima No.3’)と根頭がんしゅ病抵抗性品種 R. ‘PEKcougel’ を選抜し,両者の交雑による複合抵抗性台木の育成を試みているが,従来の形態学的な表現形質では両者の交雑後代の判定が困難なため,DNA マーカーを用いた交雑後代の判定法の開発が必要となった.本研究では,300 種類の RAPD プライマーを用いてノイバラに特異的なプライマーの開発を試み,ノイバラ特異的バンドがみられた OPAK16 プライマーを選抜した.ノイバラと類縁関係を持つバラではすべて特異的バンドが形成されたのに対して,類縁関係を持たないバラではバンドが形成されなかった.得られた特異的な増幅断片の塩基配列を決定し,SCAR プライマー SCAK16 の STS 化を行った.ノイバラと類縁関係にあるバラ品種でのみ 583 bp のバンドが確認でき,SCAK16583 プライマーはノイバラ種特異的ものであったことから,ノイバラを用いた交雑育種における活用が可能であると判断できた.