日本看護研究学会雑誌
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看護大学の病理学教育のありかた:佐賀医科大学における病理肉眼実習の取り組み
橋口 暢子井上 範江宮原 晋一
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1996 年 19 巻 4 号 p. 4_19-4_27

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抄録
  佐賀医科大学看護学科の病理学教育の一環として,病理肉眼実習を行いその教育効果について検討した。
  実習の目標は①学生が剖検後保存されている症例の臓器を観察して,主な病変を理解する,②その症例の臓器と看護記録を照合させることにより,病変を持った臓器と患者の全体像とを結びつけて考えることができるの2つを設定した。
  実習の評価は実習終了後各学生が提出した「病変を持った臓器と看護記録を見て感じたこと,学んだこと」と題した自由記述のレポートの内容で行った。
  実習に使用した症例は悪性腫瘍5例,循環障害4例,肝疾患1例であった。実習資料としてその症例の剖検記録と患者背景シートを準備した。
  各学生のレポートの評価を行うと,「主病変の観察と理解ができている」が対象学生58名中56名(96.6%),「主病変と他の臓器への影響など系統的に臓器の観察ができている」が19名(32.8%),「臓器の病変と患者の身体的・心理的状態を結びつけて考えることができている」が36名(62.1%),「臓器の病変と患者の生活習慣などを結びつけて考えることができている」が17名(29.3%),「学習したことから看護について考えることができている」が18名(31.0%)であった。
  本実習において,看護の対象である人間の反応を生物学レベルから社会的レベルまで幅広く捉えるために必要な,疾病の基本的理解を促すことができたと思われる。患者背景シートを用いて実習を行ったことが,実習効果を高める大きな要因となった。
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© 1996 一般社団法人 日本看護研究学会
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