日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
シンポジウム 「エビデンスに基づく鍼通電療法の臨床の実際」
脳血管障害に対する鍼通電療法の実際
- 後遺症の改善と脳血流の増加反応について -
山口 智
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 42 巻 2 号 p. 45-53

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抄録

 脳血管障害はわが国の死因第4位であり、有病者数も110万人を超え、地域医療、特に在宅医 療において最も重要な疾患といっても過言ではない。近年、 その原因としては脳梗塞が年々増加し、 患者全体の約4分の3を占める程になってきている。
 当科においては後遺症である中枢性疼痛、痙性(痙縮)、肩手症候群等の西洋医学的に積極的な 治療法が少なく、リハビリテーションの阻害因子になりやすい患者が神経内科やリハビリテーショ ン科、脳神経外科等から診療依頼がある。鍼灸治療は個々の症状に対する治療とQOLの向上を目 的とした共通治療に大別し、特に鍼通電療法を基本に実施している。海外の報告や当科の臨床研 究の成果より、後遺症や合併症に対し、概ね期待すべき効果が得られている。また、鍼治療を早 期から開始することで、より有効性が高いことも示されており、急性期における鍼治療の有用性 についても、今後検討する必要がある。
 脳血管の神経支配は上頸神経節由来の交感神経や、翼口蓋神経節や内頸神経節、耳神経節由来 の副交感神経に加え、感覚神経である三叉神経の関与が明らかとなり、脳血管障害や片頭痛の臨 床に重要な役割を果たしている。鍼灸治療においても、顔面部からの刺激が極めて有効性の高い ことを痛感している。
 鍼刺激による脳血流の増加反応は、患者と健常者、さらに患者でもその程度により反応に差異 のある事が明らかとなり、こうした鍼治療による生体の正常化作用が伝統医療の特質と考えてい る。

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© 2017 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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