日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
教育講演
筋筋膜性疼痛の基礎 up to date
久保 亜抄子
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 48 巻 2 号 p. 11-16

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抄録
 肩こり、筋筋膜性の腰痛、緊張型頭痛などの筋筋膜性疼痛の自覚をもつ国民は非常に多い。これらの筋筋膜性の痛みの原因は、その名のとおり筋や筋膜などの軟部組織であるとされており、 姿勢を維持する筋周囲に好発することから、筋緊張の持続による血流障害が一因であると考えられている。この痛みは、筋収縮という機械刺激に伴う痛みであるため、機械痛覚過敏として定義される。本稿では、最初に、筋と筋膜の痛みの違いについて、それらの痛みを表現する言葉の違いに着目した基礎研究論文を紹介する。この報告によると、痛みを表現するために用いる表現語が筋と筋膜では異なることがあきらかとなっている。神経障害性疼痛を判断する手段の1つとして、問診で痛みの質を聴取することはよく行われるが、筋筋膜性疼痛において、その原因が筋か筋膜かさらに絞り込むためには、ベッドサイドの問診が重要であることが示されたといえる。次に、筋膜の役割について、特に侵害受容器としての機能について検討された基礎研究結果をいくつ 紹介する。近年、胸腰筋膜や下腿筋膜を対象にした詳細な研究により、筋膜には生理的に機能している細径求心性線維が存在しており、筋膜の痛みを受容して中枢に伝えていることが示された。 また、実験的に胸腰筋膜炎を引き起こすと、胸腰筋膜支配の神経線維の数が増え、筋膜以外の組 織(下腿筋など)を同時に支配する神経線維の割合が増加したことから、筋膜の炎症は炎症部位のみならず、離れた部位の痛みとして現れる可能性も示された。最後に、筋筋膜性疼痛における ブラジキニンと神経成長因子の役割について紹介し、これらの生体内物質の慢性腰痛への関与の可能性について触れる。本稿をご一読いただき、臨床で遭遇することの多い、筋筋膜性疼痛の基 礎的な理解が一層深まることを期待する。
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© 2023 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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