2006 年 13 巻 4 号 p. 434-438
頸動脈海綿静脈洞瘻 (CCF) は痛みよりも眼症状や脳神経麻痺症状で発症することが多いため, ペインクリニック領域ではまれな疾患である. 片側の持続性の頭痛を主訴とし, 耳鳴, 複視, 差明などを合併した70歳代女性患者が, 他科では確定診断に至らず当科を紹介された. 初診時の所見よりトロサ・ハント症候群を疑い, 計3回の眼窩上神経ブロックとステロイドを投与したところ, 耐え難い頭痛は visual analogue scale 80mmから1mmまで劇的に改善した. 同時に耳鳴も軽快したが複視や羞明は変化しなかった. 後日, CCFと確定診断し, 血管内コイル塞栓術によって, 複視, 眼球突出, 結膜充血も改善した. 頭痛に加え, 同側の脳神経麻痺症状や耳鳴が存在し, 海綿静脈洞領域の病変が疑われる場合はCCFも考慮して鑑別診断のために速やかな画像診断が必要である.