2018 年 54 巻 2 号 p. 264-267
出生前に羊水過多を認めた肥厚性幽門狭窄症(本症)の2例を経験した.症例1は妊娠37週に胎児超音波検査で羊水過多と胃の拡張および蠕動亢進を認めた.在胎38週,3,210 gで出生し,出生直後より幽門筋肥厚を認め本症と診断された.症例2は妊娠28週より羊水過多を認め,在胎36週,2,398 g緊急帝王切開で出生した.出生直後は無症状であったが日齢15より嘔吐が出現し日齢23に当科を受診し本症と診断された.両症例は出生前の羊水過多の推移と出生後の経過が異なっていた.症例1は妊娠後期より急激な羊水量増加があり出生直後に本症の症状を認めたが,症例2は妊娠中期より認めた羊水過多の増悪は軽度で,出生後の経過も本症の典型例と同様に生後3週時より嘔吐を認めた.症例1の羊水過多は本症の発症に伴って発生したと考えられる.原因不明の羊水過多症例では胎児超音波で胃拡張,胃蠕動亢進の評価による本症の鑑別が必要である.