2018 年 54 巻 5 号 p. 1145-1149
直腸狭窄症は直腸肛門奇形の一病型で,極めてまれな疾患である.高度便秘により受診した直腸狭窄症の1例を経験したので報告する.症例は2歳3か月,男児.生後より便秘症として近医で内科的治療を行われていたが,腹部膨満が増悪し紹介された.肛門外観は正常で,直腸診で肛門縁より4 cmの部位にリング状の狭窄を認め,注腸造影で同部位の狭窄を確認し,内視鏡検査で直腸狭窄症と診断した.バルーン拡張術では効果なく,経肛門的に狭窄部部分切除術を施行した.病理組織では粘膜下層の活動性のある線維芽細胞を認めたが,筋層は保たれていた.術後は内服治療で排便コントロール可能となった.仙骨前腫瘤,仙骨奇形などを合併していない『anorectal stenosis』でPubMedで検索し得た報告は1例のみであり,本邦40年間の小児報告もわずか5例であった.狭窄部が肛門への脱転が可能であれば,経肛門的狭窄部切除術は良い適応と考える.