日本小児外科学会雑誌
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原著
小児気道異物15例の臨床的検討
村上 雅一中目 和彦矢野 圭輔馬場 徳朗春松 敏夫大西 峻山田 耕嗣山田 和歌加治 建家入 里志
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2019 年 55 巻 6 号 p. 1049-1055

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抄録

【目的】小児の気道異物は迅速な治療を要する緊急疾患である.しかしその臨床像は多彩な上,加えて異物がX線透過性であることが多いため診断が困難である.また小児の気道は細く,異物の摘出に難渋する場合もある.当科で経験した症例から小児気道異物の治療戦略について検討した.

【方法】当科で診療した小児気道異物症例15例の臨床像や画像所見について後方視的に検討した.

【結果】男児が10例(66.7%)と多く,2歳以下の症例が80%を占めた.症状から気道異物を疑い得たのは3例(20.0%)のみであった.異物誤嚥の目撃のみで無症状の症例も1例(6.7%)認めた.異物の種類は豆類が40.0%と最多で,また胸部単純X線検査で異物を指摘できたのは4例(26.7%)のみであり,それらはいずれもX線不透過の非食物であった.CT検査は7例で施行されたが,2例(28.6%)で異物の同定が不可能であった.全体として6例(40.0%)は画像検査上,異物を同定できなかった.摘出方法は硬性気管支鏡と異物鉗子による摘出が最多の6例(40.0%)で施行され,主に硬性の異物で行われた.3例(20.0%)は食物異物で柔らかく鉗子での把持が困難であり,軟性鏡下の洗浄・吸引で摘出された.

【結論】小児気道異物は特異的な症状を呈することが少なく,また胸部X線検査で異物を特定することは困難で,CTでも偽陰性が少ないながら存在する.乳幼児の呼吸器症状では常に気道異物を念頭に置いた診察が重要であり,疑わしければ積極的に気管支鏡検査を行うことを検討すべきと考える.

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