日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
症例報告
ネオジム磁石玩具誤飲による多発性消化管穿孔の1例
山口 修輝福田 篤久川久保 尚徳松浦 俊治
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 57 巻 1 号 p. 66-71

詳細
抄録

症例は4歳10か月男児.ネオジム磁石玩具の誤飲を訴えたため,近医を受診した.腹部単純X線写真でリング状に連なった14個の異物を認め,胃内異物の診断で緊急上部消化管内視鏡検査を試みた.胃内では9個の磁石がアーチ状に胃後壁と固着していたため摘出した.続いて下部消化管内視鏡検査を行ったが結腸内に磁石は認めなかった.残る5個は小腸内と判断し経過観察したが,翌日の腹部単純X線写真で磁石の移動を認めず,緊急手術を施行した.術中所見では,胃壁内に残存する磁石1個が横行結腸および横行結腸間膜を介して小腸内の磁石4個と吸着していた.磁石を摘出後,胃後壁,小腸および横行結腸の穿孔部を縫合閉鎖した.小児では腹痛などの臨床症状なく誤飲を繰り返す可能性があり,初診時の全身検索が重要である.また異時性に磁石を誤飲した場合,磁石が腸管壁を挟み込むことで穿孔や穿通,閉塞を生じる可能性があるため,早期の摘出を行うべきである.

著者関連情報
© 2021 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top