京都盆地周辺での分布拡大が顕著であるシイノキ類,および同じブナ科の常緑樹イチイガシ,シリブカガシの市内平野部の都市林での成長および枯死を,下鴨神社の社叢,糺の森全域で1991年,2002年と2010年に行った胸高直径10cm以上の全樹木対象の毎木調査の結果から検討した。その結果,シリブカガシは成長速度,枯死率ともシイノキ類,イチイガシの中間的な性質を示した。シイノキ類は直径20cm未満での成長速度は3種の中で最も高い値を示したが,直径階20-30cmでの枯死率は著しく高く,今後,糺の森での優占度はそれほど高くはならないと考えられた。一方,イチイガシは,成長速度は低かったものの,枯死率も非常に低く,長期的には本調査地での優占度が増大するものと考えられた。