日本緑化工学会誌
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42 巻, 1 号
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論文
  • 加藤 真司, 吉崎 真司, 橋田 祥子, 李 夏晨, 鈴木 弘孝
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 3-8
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    都市の生物多様性の向上には,可能な限り自生種を用いた植栽工事を推進することが望ましく,その推進方策を検討するためには,都市の緑化工事における使用樹種構成の現状を把握する必要がある。このため,日本造園建設業協会会員各社用された樹種を把握するためのアンケート調査実施結果から,全国の政令市・中核市・特例市及び県庁所在都市における自生種の使用状況が明らかになった。また,アンケート調査によって得られた各種意見から,自生種の生産体制の不備などの,都市の緑化工事に自生種を用いることによって都市の生物多様性向上を図ることについての課題の一端を明らかにした。
  • 中村 剛, 谷口 伸二, 大貫 真樹子, 藤原 宣夫
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 9-14
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,26個所の表土利用工施工地と25個所の自然侵入促進工施工地を対象に調査記録を整理して,この二つの施工方法の植生回復効果を比較した。全ての施工地で,記録された植被率の経時変化を基に植被率が50 %に達する施工後の月数(mc50)を求めた結果,自然侵入促進工のmc50は表土利用工に比べて有意に短かった。これは適用される立地条件や工法構造の違いに起因する可能性がある。またmc50と,立地条件に関わる各環境要因を比較した結果,mc50に大きな影響を与える環境要因は認められなかった。群落高の経時変化を比較した結果,表土利用工で群落高が速やかに増加し,より早期に樹林が形成されることが示唆された。
  • 小宅 由似, 今西 純一, 堀田 佳那, 東 若菜, 田中 伸一, 石原 一哉, 柴田 昌三
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 15-20
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    既存の森林表土を不撹乱のまま法面緑化に利用する「表土マット移植工法」が施工された切土法面の,13年経過時点での成立植生を評価した。当該法面では樹高成長が優れなかったが,これは根系成長が表土マット内に制限されていることが一因であると考えられた。一方で,全植被率は90 %と高く,法面侵食も確認されておらず,遷移の進行が確認された。表土マットに含まれる根株から,コバノミツバツツジなどのアカマツ林構成種が萌芽再生していた。またアカマツを含む木本種の侵入が確認され,現段階ではアカマツ主体の群落が成立していた。以上より,当該法面における表土マット移植工法の自然回復緑化工としての有用性が確認された。
  • 森本 淳子, 柴田 昌俊, 村野 道子, 志田 祐一郎
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 21-25
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    世界的に湿地が減少するなか,氾濫原で増えつつある休耕農地を湿地に戻すことは,生物多様性保全と生態系サービス向上の観点から有意義である。湿生植物群落の再生における表土の有効利用を目的として,休耕年数の異なる牧草地の表土を深度別に採集し,異なる水位条件でまきだし実験を行なった。その結果,周辺から種子が供給される環境であれば,牧草地の休耕年数に関わらず,土壌シードバンクには湿生植物種が含まれること,休耕年数6年~26年の上部の土壌を湿潤条件においた場合に種数が最大となること,ただし,休耕年数が6年を過ぎると地上植生の繁茂により土壌シードバンクから発生する個体数が減少することが明らかになった。掘削時に表土をとりおき,新たな掘削面にまきだしたり,表土を耕起することによって,湿生植物群落再生の促進が期待できる。
  • 近藤 賢太朗, 内田 泰三, 田中 淳, 佐藤 亜貴夫
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 26-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    本報では,桜島(八谷沢地区,西道川地区および松浦川地区)における航空緑化施工地の9-13年後の成立植生について,多変量解析を用いて標高・傾斜・方位・土壌深など環境要因との関係から考察した。その結果,対象地のすべてでススキ-イタドリ群落が成立し,植物材料として施工時に導入した外来牧草類は確認されなかった。また,同群落における木本類の定着には,傾斜ならびに土壌深,特に後者が影響していると考えられた。すなわち,傾斜が急で土壌深が浅い立地で木本類の出現頻度と成長は制約される。これに対して,傾斜が緩く土壌深が深くなるとその成長は高まる傾向にあり,土壌深がより深くなると木本類の出現頻度も高くなると考えられ,これらは既往の報告を支持するところでもあった。
  • ダーラン モハマド ザイニ, 深町 加津枝, 今西 純一, 柴田 昌三
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 32-37
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    本研究ではインドネシア西ジャワの自然の聖地,Ciomas Village に位置する Kabuyutan Panghulu Gusti (KPG) を対象に,植物種に対する地元住民の知識を把握し,水土保全のための保全地域を明らかにした。地元住民は全体の 69.2%を占める樹木を含む130 種類の植物について認識しており,関連する15 箇所を保全地域することが有効であることがわかった。また,今後の保全戦略の策定において必要な地域の地図化を行い,保護地の管理者として監守人の役割が重要であることを示した。
  • 小田 龍聖, 深町 加津枝, 柴田 昌三
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 38-43
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,多様な河川環境を評価する指標種として魚類の採捕調査をするとともに,地域住民に対するアンケート調査によって,住民の魚類の認知度や,藻刈りや清掃などの河川環境活動への意識の把握を試み,それらから河川環境の実態と住民の意識・意向を踏まえた住民主体の河川環境管理の在り方を検討することを目的とした。調査の結果,住民の魚類に対する認識と実態とには乖離があるものの,より詳しく魚類を認識している住民は,河川美化活動への意識に明確な傾向が見られた。
  • 平林 聡, 徳江 義宏, 伊藤 綾, ELLIS, Alexis, HOEHN, Robert, 今村 史子, 森岡 千恵
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 44-49
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    川崎市川崎区を事例に,都市樹林評価モデルi-Tree Ecoを試行し,その解析結果および都市樹林管理業務への活用について考察した。モデルの改変,パラメータの設定を行い,一般に公開されているデータを入力データとして用いることで,街路樹による炭素蓄積・固定量,住宅の冷暖房使用増減量,大気汚染物質除去量とそれによる健康被害軽減,雨水流出量の削減を推定した。また,それらの貨幣価値は,参考値であるが年間約530万円と推定された。
  • 大塚 芳嵩, 那須 守, 渡部 陽介, 高岡 由紀子, 岩崎 寛
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 50-55
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    近隣住民の社会および健康状態の因果関係と都市緑地の利用との関連性を検証するため,江東区に在住する住民1,553名を対象にオンラインアンケート調査を実施した。はじめに,近隣住民の社会および健康状態の因果関係モデルとして,構造方程式モデリング(SEM)により“剥奪指標上位型モデル”を構築し,多母集団パス解析により都市緑地の利用による影響を分析した。この結果,公園および個人住宅の高頻度利用者は,低頻度利用者と比較して「自己効力感→健康QOL」に掛かるパス係数が有意に高いことが示された。以上のことから,都市緑地の利用による健康増進効果の因果関係をモデルにより推定した。
  • 矢動 丸琴子, 大塚 芳嵩, 中村 勝, 岩崎 寛
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 56-61
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    近年,ストレス対策を目的としたオフィス緑化が注目されているが,業種別の差異について検討されているものはない。そこで,本研究では,仕事・職場に対する評価としてVASを気分状態に対する評価としてPOMSを用いて,さまざまな業種を対象として現地実験を行い,実際のオフィス空間において,植物設置前後での勤務者の感情状態を測定した。その結果,植物を設置することで,勤務者の負の感情状態が改善されること及び業種・職種ごとの特徴や社内の雰囲気などにより結果に差が見られるということが示唆された。また,一度植物を撤去し,再設置した際には,同一の植物ではなく異なる植物を設置した対象者において,より高い効果が得られた。
  • 濱田 梓, 福井 亘, 水島 真, 瀬古 祥子
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 62-67
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    農空間はモザイク状空間であり,重要な生物の生息空間である。しかし,都市や近郊部では宅地化などの影響により農地が減少している。そこで本研究では,農地が広く残る空間と宅地化の進む農地空間を対象として越冬期に鳥類調査を行い,宅地化および農地の連続性が鳥類に与える影響を明らかにすることを目的とした。その結果,宅地化により建築物,道路面積が増加し,ホオジロに負の影響を与え,ハクセキレイやスズメなどに正の影響を与えることが分かった。宅地化の進む地域ではヒバリ(Alauda arvensis Linnaeus.)が観察されなかった。また,宅地化の進む地域においても農地の連続度は鳥類に影響を与えていることが明らかとなった。
  • 高林 裕, 福井 亘, 宮本 脩詩, 瀬古 祥子
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 68-73
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    大都市圏の水辺空間は,親水空間のみならず生物の生息環境としての機能も担っているが,その実態の把握は難しい。本研究では大都市圏の河川沿いの囲繞景観を水際空間と定義し,水際空間という限られたスケール内で土地利用と鳥類との関係を調査・解析し明らかにすることを目的とした。大阪市中之島の水際空間を対象とした結果,高木から低木まで様々な階層の植栽に加えて,陸域と水域の間に位置するコンクリートでできた緩衝帯や,芝生が鳥類の多様度と種数に正の影響を与えていた。また道路や建築物は負の影響を与える傾向にあったが,これらの人工的な空間を利用する種も確認された。
  • 大島 潤一, 栁澤 賢志, 飯塚 和也, 石栗 太, 横田 信三
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 74-79
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,栃木県北部に位置する宇都宮大学船生演習林を対象に,クマ剥ぎを受けたヒノキの被害実態を調査し,剥皮部の腐朽の進行について考察した。ヒノキの本数被害率は0.6%であり,被害時の林齢は11~93年であった。ヒノキの被害木の平均胸高直径は25.3 cmであり,被害木の胸高直径は,健全木のものよりも大きい値を示した。剥皮最大高は1.5~2.0 mが多く,剥皮率は10~30%が多かった。剥皮部表面の腐朽度,ピロディン打ち込み深さは剥皮後の経過年数とともに増加し,応力波伝播速度は減少した。被害を受けたヒノキでは,表面腐朽が被害後10年目に著しく進行するが,内部腐朽は不明瞭な傾向を示した。
  • 大塚 勇哉, 倉本 宣
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 80-85
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    春植物が消長したあとどのようになっているのか,植生を把握することを目的とし,神奈川県境川沿いにある2つの異なる河畔林緑地で調査を行った。各調査地の春植物生育地内に2 m×2 mのコドラートを合計21カ所設置し,コドラート内の植生と光環境の季節変化を追った。調査の結果,春植物が消長したあとの植生として,高茎草本などの特定の種が優占するコドラートと,特定の優占種は存在しないコドラート,そしてほぼ何も生えてこないコドラートの3つのパターンがみられた。
  • 中嶋 真希, 田端 敬三, 奥村 博司, 阿部 進
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 86-91
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    奈良市内の都市近郊二次林において,コバノミツバツツジ (Rhododendron reticulatum) の開花を調査し,その影響要因について検討した。その結果,対象個体の樹高と胸高断面積,土壌交換性 K 含量,周辺競争個体との胸高断面積相対比が開花に影響していた。開花の有無を目的変数とする一般化線形モデルでは,1) 対象個体の樹高,2) 土壌交換性K含量,3) 半径3 m圏内の上層木との胸高断面積相対比が説明変数として選択され,予測精度は74.2%と良好であった。また,予測精度上位2つのいずれのモデルにおいても,半径3 m圏内の競争木との胸高断面積相対比が説明変数として選択され,半径3 m 圏内に位置する競争木の管理が本種の開花を促進する上で重要であることが示唆された。
  • 中島 有美子, 吉崎 真司
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 92-97
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    愛知県渥美半島堀切海岸において広葉樹海岸林の種組成・構造を植生調査及び毎木調査により調査し,分布パターンを検討した。TWINSPANを用いて調査方形区を区分したところ,4つの群落型に分類され,それぞれの群落型は海側から内陸側に向かって変化した。広葉樹各種の個体分布は,マサキやトベラ,オオバイボタが海側の林縁部に偏って生育しており,ヤブニッケイ,モチノキ,ヤブツバキは全域において広く分布していた。また,高木層を形成している個体は海側から陸側にかけて樹高が高くなった。
  • 西牟田 和沙, 簗瀬 知史
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 98-103
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    草刈りに要する費用が最小になる草刈時期を設定することを目的に,名神高速道路栗東インターチェンジのススキ (Miscanthus sinensis Anderss) とチガヤ (Imperata cylindrical (L.) Beauv.) が優占する盛土のり面において,草刈時期の異なる調査区を設け,草丈及び刈草重量と草刈りに要した費用を調査した。その結果,草丈と草刈りに要した費用に高い正の相関が認められ,刈取時の草丈が低いほど草刈りに要する費用が抑えられることが明らかになった。調査で得た草丈の実測値と気象データ (気温,降水量,日射量) から草丈を推定するモデル式を構築した。任意の維持管理上の草丈上限値を設定し,草丈推定モデル式を利用することで,草刈費用が最小となる時期を推定することができた。
  • 田端 敬三, 橋本 啓史, 森本 幸裕
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 104-109
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    京都盆地周辺での分布拡大が顕著であるシイノキ類,および同じブナ科の常緑樹イチイガシ,シリブカガシの市内平野部の都市林での成長および枯死を,下鴨神社の社叢,糺の森全域で1991年,2002年と2010年に行った胸高直径10cm以上の全樹木対象の毎木調査の結果から検討した。その結果,シリブカガシは成長速度,枯死率ともシイノキ類,イチイガシの中間的な性質を示した。シイノキ類は直径20cm未満での成長速度は3種の中で最も高い値を示したが,直径階20-30cmでの枯死率は著しく高く,今後,糺の森での優占度はそれほど高くはならないと考えられた。一方,イチイガシは,成長速度は低かったものの,枯死率も非常に低く,長期的には本調査地での優占度が増大するものと考えられた。
  • 竹内 真一, 髙橋 理一, 飯田 真一
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 110-115
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    樹木の移植後の生育評価を検討した長期の樹液流動の測定結果は非常に少ない。本研究では常緑樹種であるタイサンボクの移植個体を対象に,ヒートパルス速度を4カ年に渡ってヒートレシオ法により連続測定した。ヒートパルス速度から推定される樹液流動は,経年的に順調に増加し,3年目から適用したグラニエ法の樹液流速の測定結果からも流れの増加は支持された。また,樹幹内の流速分布は時間経過とともに外側が内側の流れを卓越する結果が3年に渡り得られた。実測した移植直前の個体葉面積と移植後4年目の落葉葉面積がほぼ等しいことから,葉量は増大した。さらに,土壌断面調査により顕著な根系伸長が観察され,地下部の拡大が確認された。経年的な樹液流動の増加と樹幹内の流速分布の変化は計測個体の拡大と調和しており,移植後の正常生育を判定するツールとして樹液流動の計測が有効であることが明らかとなった。
  • 楠瀬 雄三, 村上 健太郎
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 116-121
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,岸和田市沖に造られた海浜における造成初期の植生の動態を明らかにすることで,今後,海岸植物の生育地として新たに海浜を造成する際の検討資料とすることを目的とした。本海浜では,造成後からおおよそ5年程度で種数が飽和した状態に至ったと考えられた。海岸植物として6種が確認されたが,それぞれの種の大阪湾内における出現状況や海浜の大阪湾流への閉鎖性から,海岸植物の種子が本海浜へ到達するポテンシャルは低いと考えられた。造成初期から波浪による侵食によって海浜面積が減少していることや,特定外来生物のナルトサワギクが確認されることなどから,造成当初からモニタリングする必要性が高いことがわかった。
  • 大澤 啓志, 上野 澪, 七海 絵里香
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 122-127
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    2011年の東日本大震災後の天然更新の可能性を検討するため,仙台湾岸の被災海岸林で被災4年目のマツ実生の分布実態を調査した。汀線に直交する測線上の調査区内で齢別の実生数を計数した。2013年生の実生数が最も多く,2014年生は急減していた。クロマツは残存高木の多い浜堤で,アカマツは浜堤より内陸側で実生密度が増加し,両種とも海側では著しく低かった。実生密度と開空率,土壌水分との直接的な関係は認められず,実生の空間的な分布には種子供給木となる残存高木の有無が強く影響していた。マツ林の天然更新による自律的な回復が効果的に得られるのは,一定の条件を満たす場所でのみであると考えられた。
  • 平野 尭将, 小林 達明, 高橋 輝昌, 恩田 裕一, 斉藤 翔
    原稿種別: 論文
    2016 年42 巻1 号 p. 128-133
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    里山林における樹木の放射性セシウムの不動化量を明らかにするため,福島県伊達郡川俣町山木屋地区において樹体各部位と土壌の137Cs濃度を調査した。有機物層の除去処理の影響について調査するため,WIPの考え方を用いて,材への 137Cs の不動化量の推定を行った。コナラはアカマツより幹材の137Cs濃度が高く,放射性セシウムをよく吸収していた。コナラの樹体内の137Csは辺材部に分布し,樹幹の方向によって,大きく濃度が異なった。材の 137Cs 濃度や不動化量は個体間のばらつきの影響によって統計的な有意差を検出できなかったが,林地処理区は対照区よりも低い傾向が見られた。したがって,林地のリター除去処理が樹体内の 137Cs を低下させる可能性が示唆された。
技術報告
  • 石垣 幸整, 堀江 直樹
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 137-140
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    与那国島においてすき取り土を使用した吹付による森林表土利用工を施工した。すき取り土は,生育基盤材1 m3あたり約 0.7 m3 使用した。施工約1年後の植生追跡調査では,35種類の植物が確認され,植被率は50~100 %となり良好な植生状況であった。また,施工適期を3ヶ月以上経過すれば十分な植生が成立することが確認され,平均気温からみた施工適期を外れた5月も施工可能な時期として柔軟に判断できる知見を得た。
  • 寺本 行芳, 下川 悦郎, 全 槿雨, 金 錫宇, 江﨑 次夫, 松本 淳一, 土居 幹治
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 141-144
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    堆積岩斜面における崩壊発生後5~43年が経過した表層崩壊跡地を対象として,木本植生の回復とそれに伴う表層土の回復について検討した。木本植生の個体数および種数は,崩壊発生後約20年で最大となり,その後減少した。木本植生の胸高断面積合計は,崩壊発生後の経過年数の増加とともに増大した。Fisher-Williams の多様度指数 α および常緑広葉樹の出現率より,崩壊発生後40年以上が経過した木本植生は,極相に近い状態にあると考えられた。さらに,崩壊発生後40年以上が経過した表層崩壊跡地における表層土厚から表層土の回復速度を計算すると0.51 cm/yearであった。
  • 井上 裕介, 東口 涼, 柴田 昌三, 山田 守
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 145-148
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    ニホンジカの分布域における斜面緑化工では,採食による裸地化や踏み荒しによる土壌侵食などの被害が増加している。シカ被害対策としては一般に侵入防止柵が用いられることが多い。しかし,斜面では,落石,倒木,積雪のグライド圧などにより侵入防止柵の変状の危険性が高い。そこで,斜面に適応した新しいシカ侵入防止柵を開発し,その効果確認のための実験を行った。実験区設置後約1年間のモニタリングでは,供試植物に対する採食実験,シカの侵入痕の目視確認より,新しいシカ侵入防止柵に侵入防止効果があることを確認した。実生の植被率,出現種数は,実験区内と実験区外の差異は明確ではなかった。
  • 東口 涼, 柴田 昌三, 井上 裕介, 山田 守
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 149-152
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    京都市北部では,2000年代にチュウゴクザサの一斉開花・枯死が起きたが, ニホンジカの採食圧により開花後の群落再生が進んでいない。本実験では,一斉開花後, 長期間シカによる食害にさらされた実生由来ササの再生経過を調査するため,落石等に耐えうる新しいシカ侵入防止柵を開発し,モニタリングを実施した。施工後約1年の間には侵入防止柵には大きな変状は見られず,シカの侵入も確認されなかった。実験区のササについては僅かな初期成長ではあるが,群落回復の傾向が確認され,今後の継続的なモニタリングの必要性が示唆された。
  • 江澤 辰広, 河原 愛, 中西 夏輝, 山梨 太郎, 堀江 直樹
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 153-155
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    酸性土壌では溶解度が上昇したアルミニウムによって根が損傷を受けるため,植物の養水分の吸収が阻害される。強酸性土壌から分離されたアーバスキュラー菌根菌は,酸性土壌においても植物に感染し,養水分供給を通じて,宿主植物の酸性土壌への適応力を向上させる。本稿では,耐酸性菌根菌による植物耐酸性の向上メカニズム,緑化工への応用開発過程,および施工後の追跡調査結果について報告する。
  • 堀江 直樹, 山梨 太郎, 江澤 辰広
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 156-159
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    法面緑化工事では,施工対象地の土壌 pH (H2O) が4.0以下の場合,酸性対策を施す必要がある。岡山県備前市の鉱山跡地では,pH (H2O) 2.7~4.8 および pH (H2O) 2.2~3.2 の酸性硫酸塩土壌法面に対し,耐酸性菌根菌を用いた植生基材吹付工を実施した。生育初期の緑化植物においては,酸性障害の兆候は認められなかった。施工後4か月から3年を経過した法面においては,シカの食害は認められたものの,植被率は高く維持されていた。菌根菌の感染率は,施工後から3年目にかけて徐々に増加しており,この間に緑化植物の菌根菌への依存度が上昇したものと推察された。
  • 澤田 円, 我妻 尚広, 岡本 吉弘, 森 志郎
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 160-162
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    本調査では遺伝的多様性に配慮した個体群保全や植生復元に向けた地理的な遺伝変異の把握のため,大雪山の旭岳姿見の池と高原温泉に自生するエゾコザクラの葉緑体ゲノム trn L(UAA)3' exon - trn F(GAA) 領域と atp B - rbc L 領域の遺伝変異の有無を調べた。その結果,旭岳姿見の池の17個体,高原温泉の14個体で塩基配列を決定できた。両領域で多型が検出され,その組み合わせから4種のハプロタイプが確認された。さらに,調査地で存在するハプロタイプやその出現割合に差があることが明らかになった。
  • 戎谷 遵, 岡 浩平
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 163-166
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    香川県有明浜において,海浜植物のモニタリングの基礎データの取得を目的として,小型UAVによる空中写真 とSfM 技術を用い,有明浜全域の植生と微地形を調査した。有明浜では海浜植物群落が全体の51 %の面積を占め,海浜幅が広い場所では,汀線側から陸側に向かって,コウボウムギ→ハマゴウ→カワラヨモギと群落が変化した。希少種は8種確認され,このうちハマウツボやビロードテンツキなどの5種は生育面積が 100 m2を下回り,絶滅の危険性が極めて高いことがわかった。
  • 倉本 宣, 山本 知紗, 三島 らすな, 谷尾 崇, 平林 由莉, 宮田 真生
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 167-170
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    明治大学農学部応用植物生態学研究室 (以下研究室と記す) の教員と学生は,明治大学の4つのキャンパスとその周辺の自然に目を向ける活動を行ってきた。教職員に対する専任教授連合会のキャンパスの自然フォーラム,公開シンポジウム,学生に対する学部間共通総合講座「キャンパスとその周辺の自然に学ぶ」,千代田区の補助事業で研究室学生による簡単な調査と一般市民に対する普及活動から成る千代田学を行った。活動により研究室はキャンパスの自然を体験的に理解し,生物多様性地域戦略に役立つ簡単な調査でわかりやすい報告を作成できるようになった。
  • 池田 航助, 中島 敦司, 大南 真緒
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 171-174
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    紀伊半島に分布するアマモ場の分布についての情報は非常に少ない。そこで,紀伊半島西部南東部におけるアマモ,コアマモの生育地点を2012年と2015年の調査によって特定した。また,特定した地点の痕跡量や群落のポリゴンをもとに,2時期の比較を行い,群落の消長を明らかにした。紀伊半島には生育地点が21地点あり,消長を確認できた地点は16地点あった。減退した地点は北西部に集中しており,消長の形態には3つのパターンがあることがわかった。紀伊半島においては海水温の変化よりも透明度の変化がアマモ,コアマモの消長に大きな影響を与えていると考えられた。
  • 福井 亘, 森本 幸裕
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 175-178
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    大阪万国博覧会記念公園では,自立した森づくりを進め,大都市内で貴重な緑地となっている。本技術報告では,5か年における当該公園内での鳥相を調査し,現在までの鳥相変化,今後につなげられる経過を簡易報告する。定期的な鳥類のモニタリング調査は,関西地域において事例が少なく,本報告の調査データは,今後の大都市の緑地での自然回復への参考として提示をしたものである。
  • 日置 佳之, 山田 智美, 柳楽 幸一
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 179-182
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    鳥取市で2015年に行われた自生の草本種を用いた路傍草地について,植栽1年目の状況を調査・評価した。真砂土とバーク堆肥を用いた植栽基盤は,少雨時にはやや乾燥した。また,バーク堆肥の添加有機物により富栄養な状態となった。16種の植栽種の活着率には種間で大きな差が見られ,土壌の乾燥や強光条件に弱い種では活着率が低かった。一方,コマツナギなど一部の種は旺盛に繁茂し,他種を圧倒する勢いで生長した。50種の侵入種が確認され,そのうち26種が自生種,22種が外来種であった。侵入種の中には,自生種・外来種とも旺盛な繁茂を示す種があり,継続的な選択的除草が必要と考えられた。
  • 田崎 冬記, 渡邉 幸一, 村中 寿孝
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 183-186
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    オオイタドリの堤防法面での繁茂は通行障害や堤防の変状確認等への影響が大きいことから,同種の過剰な繁茂は北海道における河川維持管理の大きな課題であり,抑制に向けた各種の対策が検討されている。そこで,本調査では,重曹を用いたオオイタドリ抑制効果について調査し,グリホサートとの比較検討も行った。その結果,重曹には地上部の枯殺,2次枝数・開花率の抑制に効果があることを明らかにした。また,重曹による地上部枯死率は9月下旬では80 %以上に達し,グリホサートと大きな差異が無いことが示された。今後は,追跡調査を行い,経年的な効果を確認することが重要と考える。
  • 小島 仁志, 福留 晴子, 小谷 幸司, 島田 正文
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 187-190
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    神奈川県立境川遊水地公園を対象に,河川水の流入するビオトープエリアの樹木生育分布とその維持管理に関する基礎的調査を行った。その結果,合計で728本のヤナギ類を中心とした種組成を把握し,また河川水の流入口(越流堤)などの管理を要する箇所の整理,また外来種(イタチハギ)や先駆樹種(ヌルデ)の生育分布特性について把握した。以上の樹木生育分布状況に対応した植物管理手法の実施計画案についても報告する。
  • 菱沼 宗一郎, 小島 仁志, 小谷 幸司, 島田 正文
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 191-194
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    オオバコを用いた在来種緑化マットの踏圧耐性及びその生育生態を調査した。調査は,無踏圧,日当たり踏圧回数20回,50回,100回の4条件を設け,2015年6月~12月までのほぼ毎日踏圧を付与し,その生育調査(草高・葉数・緑葉の程度など)を行った。その結果,踏圧区はほぼ通年で緑葉が維持され,本種の踏圧耐性が高いことが把握された一方で,無踏圧区は秋季からは落葉する個体が目立つなど景観的配慮の伴う緑化手法が必要であるなどがわかった。
  • 加藤 正広
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 195-196
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    近年,屋上緑化の施工現場では,芝のように施工が容易なマット植物による緑化方法が注目され,軽量で運搬・施工性が良く,施工後の水管理に手間のかからないロールマットの開発が求められている。そこで,マット植物として需要の多いヒメイワダレソウを用い,軽量で保水性に優れたロールマットを生産するための技術開発を行った結果,培養土にフェノール樹脂発泡体を体積率で20~40 %混合することによってロールマットの軽量化が図られ,保水性が向上することが明らかとなった。
  • 曹 丹青, 長谷川 啓示, 高橋 輝昌, 岩崎 寛
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 197-199
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    ウレタン製土壌改良材を混入した芝生を利用した際の心理的効果について把握するために,ウレタン混入割合の異なる芝生地において,SD法による印象評価実験を試みた。芝生での利用行動として「見る」「座る」「寝転ぶ」「歩く」の4つを取り上げ,ウレタン混入割合と利用行動の関係について検討した。その結果,利用行動により印象が異なり,60 %ウレタン混入芝を歩いた時に,20 %混入区,0 %よりも柔らかく感じることなどが明らかとなった。また,質問紙調査の結果から,求める芝生地の柔らかさは利用行動によって異なることが分かった。
  • 山瀬 敬太郎, 藤堂 千景
    2016 年42 巻1 号 p. 200-203
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    生産性の低い針葉樹人工林を天然生の広葉樹林に誘導することは,将来的な森林管理における選択肢の一つである。そこで,伐採後に遷移中後期種の夏緑高木を植栽した場所で,3成長期間後に生育する植物種を調査し,植栽木を含む将来的な林冠構成種(照葉高木,夏緑高木)の生育状況を分析した。伐採地内合計362区の調査区(1×1 m2) における優占種は,植栽木由来の割合が調査区数の30~40 %であった。一方,植栽木由来を除いた植物種では,夏緑低木や林縁低木,籐本,多年草が多くを占め,優占種が夏緑高木や照葉高木である調査区数は5 %以下であった。以上のことから,針葉樹人工林伐採地において,遷移中後期種で林冠構成種による広葉樹林化をより確実に行う場合,植栽が必要であることが示された。
  • 島田 博匡
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 204-207
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    ニホンジカ高密度生息地域におけるヒノキ人工林に間伐区と無間伐区を設け,土砂受け箱法により間伐後の表土移動量(細土,土砂,リター)を比較することで,シカ高密度生息地域における表土移動に及ぼす間伐,地表面被覆,傾斜の影響を検討した。間伐区の表土移動量は無間伐区よりも少なかったが,間伐後に地表面の植生被覆率は増加していなかった。一般化線形混合モデルによる解析の結果,各土砂受け箱の表土移動量は地表面の植生被覆率,リター被覆率,石礫被覆率と関係していたが,シカ採食の影響を受けた人工林では間伐有無に関わらず植生被覆率が低いことから,リターと石礫の被覆率が表土移動量を決定していた。
  • 川西 良宜, 小笹 浩司, 小林 恒夫, 上島 慶, 首藤 繁雄
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 208-211
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    近年,高速道路において倒木等による交通安全上のリスクが顕在化してきた。そのため,西日本高速道路株式会社では,本来の植栽機能を損なわず,倒木によるリスクの回避と維持管理コストの低減が図れることを前提として,植栽木及び道路外から飛来し生育した樹木も含めた緑地のあるべき姿を策定し,15年計画にて高速道路緑地をあるべき姿へ移行する取組を始めたところである。本報告では,将来あるべき高速道路の緑地形態策定の考え方及びその形態への移行に向けた管理計画について述べる。
  • 今西 純一, 中村 亮
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 212-215
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    公の施設の管理を民間の団体にも認める指定管理者制度においては,指定管理者のノウハウを活用した多様な住民ニーズへの対応と経費削減による効果的な管理が期待されている。本研究は,都市公園の指定管理者制度における評価やフィードバックの実態をアンケートにより調査し,その課題を検討した。その結果,評価については,所管課と指定管理者の相談による目標設定や,加点型評価,所管課の現場確認回数の増加,事業報告書の客観的評価基準や採点方法の導入等が,今後の課題として挙げられた。フィードバックについては,自主的な行動の変化が促される業務改善指導や,満足度調査の方法についての指示等が課題として挙げられた。
  • 佐藤 厚子, 林 憲裕, 山田 充, 生方 雅男
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 216-219
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    近年,道路維持管理にかかる費用のコストを縮減しなければならない社会情勢にある。道路のり面の緑化に対しても効率的な維持管理が求められ,除草回数を低減する方法がとられている。しかしながら,十分な交通の安全性を確保することには限界があることから,効率的な維持管理方法として,防草および植物の生育を抑制する方法によりコスト縮減を試みた。具体的には,工事現場付近で発生する木材チップで地表面を覆う方法,およびグラウンドカバープランツによる表面被覆工法である。その結果,これらの方法で,防草および植物の生育抑制効果があることを確認できた。
  • 今西 亜友美, 松本 愛
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 220-223
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    淀川を対象として昭和20年代以降の子どもの河川利用の変化を調査した。20~60代の男性,各世代10名にヒアリングを行った結果,40~60代では魚つり,水泳などの水に触れる利用方法が多かったが,世代が若くなるにつれ,校外学習や花火大会などの水に触れないものに変化したことが分かった。また,小学生時代に週4,5回以上は淀川で遊んでいた40~60代は,淀川を日常的な遊び場と認識していたが,月に数回以下の20~30代はイベントなどが行われる特別な場所と認識していた。若い世代における淀川利用の減少の要因として,水質の悪化や淀川に行くことを禁止する社会規範のほか,家庭用ゲームの普及の影響が大きいことが推察された。
  • 橋田 祥子, 飯島 健太郎, 北村 亘, 吉崎 真司
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 224-227
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    都市における学校林は,生き物の棲家として,また地域住民にとって自然と触れ合える貴重な場所である。本研究では,東京都市大学横浜キャンパスの学校林を対象に,都市に残存する緑地の環境教育の場としての有効活用方法と今後の活動の有り様を検討することを目的として,大学独自で取り組んできた緑地保全活動の成果のとりまとめと活動に参加した地域住民へのヒアリングを行った。その結果,学校林は学生の環境教育に有効活用できているが,目的や意義を引き継ぎながら維持管理することの難しさや,開かれた大学として市民の期待がある一方,参加者数の安定的確保など課題も見つかった。
  • 繁冨 剛, 安里 俊則
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 228-231
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    新名神高速道路通過予定地の淀川河川敷には,「鵜殿ヨシ原」と呼ばれる雅楽に使用される良質なヨシの自生地がある。そのため,環境保全を目的に各種調査,検討を実施している。その一つとして,簡易動的コーン貫入試験を実施し,結果を長谷川式土壌貫入試験値に換算し,地下茎の確認状況や,土質構成から良質なヨシの生育環境を評価した。
    その結果,良質なヨシの生育場所は軟らかなシルト層が広がる箇所であることが確認された。
  • 西牟田 和沙, 簗瀬 知史
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 232-235
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    ヨシの種子の発芽実験を25 ℃ の環境下で実施した結果,採り撒きの種子よりも,低温処理種子の方が発芽率が低かった。また,実生苗を水深の異なる4つの処理区(灌水区,底面湛水区,半湛水区,冠水区)および施肥区と対照区(無施肥)の2つの処理区の計 8 試験区において約 2年間育成した結果,茎数は水深が深くなるほど増加し,施肥によっても増加する傾向がみられた。根系の発達は,湛水面が低いほど地下茎が発達し,湛水面が高いほど細根の発達がみられ,水深に応じて根系の発達する器官が異なった。さらに,地下茎は湛水面の位置に応じて形成位置が変化することが観察されたことから,地下茎の形成位置と水深には関係があることが示唆された。
  • 中嶋 佳貴, 沖 陽子
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 236-239
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    異なる水深条件(約0 cm,約5 cm,約10 cm,約20 cm)に形成されたヒメガマ実生群落を対象に2014年4月より約1ヶ月ごとに地際で刈取って再生状況を調査した。水深条件が約5 cm以上となると8月までの4回の刈取りにより完全に再生を制御できたが,約0 cmでは9月以降3回刈取っても2015年には再生が確認された。一方,ヨシ実生群落は約5 cmの水深条件で2014年に7回刈取り処理を実施しても2015年には稈数,現存量ともに2014年4月より増大した。
  • 近藤 晃, 袴田 哲司
    原稿種別: 技術報告
    2016 年42 巻1 号 p. 240-243
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー
    コンテナ苗の植栽に用いるディブルでは,植穴の側面に圧密された壁状の土面が形成され,根系成長に影響を及ぼすことが指摘されている。そこで,ディブルの丸棒歯部に幅10 mm の翼を2枚取付け,植穴内で回転操作を行うことにより植穴側面の土壁を解すことが可能な改良型ディブルを試作した。改良型ディブルを用いた植穴側面の土壌硬度はディブルのそれより有意に低下した。植穴を開ける際に翼の回転操作を行っても穴開けおよび植付けの作業時間はディブルと同等であった。改良型ディブルの植栽能率は常法(裸苗の唐鍬植え)の約 2倍であった。本調査地は A層が団粒状構造の砂礫が少ない土質で堅密度が低いため,植栽器具の違いが初期成長に及ぼす影響は認められなかった。
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