日本統計学会誌
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臨床試験の統計学的側面
広津 千尋
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1993 年 22 巻 3 号 p. 475-492

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抄録
臨床試験には一般的な統計解析の原理はすべてあてはめられる一方,いくつか特徴的なこともある.第一に施設,重症度,起因菌のように,一つの臨床試験内では母数的な標示因子と考えられるのに,実際の臨床処置においては必ずしも特定できず,誤差と考えざるを得ない,いわゆる変動因子が多数存在する.これに対処するモデルペーストの接近法としてここでは比例ハザードモデル,ロジスティック回帰,順序分類データに対する回帰モデル等の一般線形モデルについて述べる.ただし,解析の結果を当該臨床試験を超えて適用するにはモデルの十分な吟味が必要であり,二重盲検無作為化試験に基づくデザインベーストの接近法が必要であることも多い.それについては第2節で述べる.次に臨床試験では非正規分布を取り扱うことが多いが,分布形を仮定しない順位データに基づく方法は順序分類データにも用いることができその逆もいえる.経時測定データの解析は現在発展中の分野であるが,これに関しては一般化多変量分散分析模型に加え, 2段階混合模型,非線形混合模型を紹介する.その他の重要な問題として推論の多重性の問題,および新薬と標準薬の同等性を証明するための統計的方法について述べる.
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