日本手外科学会雑誌
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自由投稿論文
長母指伸筋腱皮下断裂に対し固有示指伸筋腱欠損を呈した1 例
佐柳 潤一寺田 幸生
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2024 年 41 巻 2 号 p. 148-150

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抄録

橈骨遠位端骨折に続発する長母指伸筋腱(以下EPL)皮下断裂に対して,固有示指伸筋腱(以下EIP)による腱移行術が標準的治療とされているが,EIP の欠損・低形成例では他の力源による再建術が必要となる.今回,著者らは,EIP 欠損のため小指伸筋腱(以下EDM)による腱移行術を施行した1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は57 歳女性で,転倒による左橈骨遠位端骨折に対し前医にて外固定を開始し,受傷15 日目に左母指伸展障害を認め,当科を紹介受診した.EPL 皮下断裂の診断に対し受傷56 日目に手術を施行し,術中所見でEIP の欠損を認めたため,EDM を力源とした腱移行術を施行した.術後は3 週間の外固定の後に可動域訓練を開始し,術後9 か月で左母指IP 関節自動伸展-5°,屈曲90°と日常生活に支障なく,経過良好である.EIP 欠損・低形成例に注意するとともに,遭遇した際はEDM による再建が有用な選択肢の一つと考える.

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