2025 年 42 巻 3 号 p. 326-329
神経伝導検査(NCS)で重症と診断された手根管症候群(CTS)症例における術前要因と術後成績の関連を検討した.当院で手術を行ったCTS 症例322 例のうち,Bland 分類grade 4~6,かつ6 か月以上フォローできた176 例203 手を対象とした.術後に再評価を行い,grade が2 段階以上改善した症例を改善群(171 手),1 段階以下の症例を非改善群(32 手)とし,術前時点の年齢・性別・合併症・患者立脚型評価・筋力・NCS 結果(複合筋活動電位(CMAP)など)について2 群間の比較とロジスティック回帰分析を行った.年齢,性別,合併症などは2 群間に差を認めなかったが,術前NCS 項目に有意差を認めた.ロジスティック回帰分析では「女性」(オッズ比2.61)と「術前CMAP 波形が導出可能」(同6.76)が改善群に関連する独立した因子であった.重傷CTS 症例において,年齢や合併症は術後NCS の改善度に大きな影響を与えず,術前にCMAP が計測可能な症例では術後NCS の改善が期待できる.