経営哲学
Online ISSN : 2436-2271
Print ISSN : 1884-3476
投稿論文
経営者の認知的柔軟性が戦略的転換に及ぼす影響
池野 純小沢 和彦
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2025 年 22 巻 1 号 p. 20-31

詳細
抄録

アッパーエシェロン理論に基づく戦略的転換の研究では、経営者の在任期間が長くなるほど自らのパラダイムに固執し、柔軟性が欠如することによって戦略的転換が抑制されると主張されてきた。つまり既存研究において、戦略的転換には柔軟性が必要であると仮定されてきた。

一方で、戦略的転換研究と系譜の異なる認知的柔軟性の既存研究によると、認知的柔軟性には正の側面だけでなく負の側面もあると指摘されている。認知的柔軟性がもたらす負の影響を踏まえると、戦略的転換の先行研究のように「経営者の認知的柔軟性が高ければ戦略的転換が促進される」といえない可能性がある。むしろ、認知的柔軟性は戦略的転換を抑制する可能性がある。このような現状を踏まえて、本研究では「経営者の認知的柔軟性が戦略的転換に及ぼす影響について検討すること」を目的とする。

本論文では、認知的柔軟性の3つの構成要素であるシフト、対立、再形成が戦略的転換に及ぼす影響を検討している。具体的に、シフトの能力が高い経営者は、新しい刺激に柔軟に適応し、自らの考え方を切り替えるため、戦略的転換を促進する。また、対立の能力が高い経営者は、組織内のコンフリクトを和らげられるうえ、組織内の矛盾や相反する意見を受け入れられるため、戦略的転換を促進する。一方で、再形成の能力は、複数の選択肢を多角的に検討することで新しい機会を特定する可能性を高めるものの、意思決定に過度な時間を要して意思決定の遅延や複雑化を招くことで、戦略的転換を抑制する可能性がある。さらに、環境の変化が激しい場合、戦略的転換の実行までに求められる時間は短くなるため、再形成による戦略的転換の抑制への影響は大きくなる。一方で、環境変化の程度が低い場合は、再形成は適切なタイミングでの戦略的転換を促進する可能性がある。

著者関連情報
© 経営哲学学会
前の記事 次の記事
feedback
Top